52人が本棚に入れています
本棚に追加
「桃ちゃん顔上げてよ。桃ちゃんは何も悪くない。勘違いさせてしまった僕が全面的に悪いよ。
本当にごめん……。僕、知らず知らずに桃ちゃんを傷つけてたんだね……ごめん。僕には桃ちゃんしかいないよ」
「本当……ですか? 」
顔を上げた桃ちゃんが、潤んだ瞳で僕を見つめている。
本当に決まってる。毎日毎日、桃ちゃんのことを想ってた。
すぐ傍にいるのに、まるで知らない人みたいになってしまった桃ちゃんを見る度に、自分がどれほど桃ちゃんのことを好きだったのか痛いくらいに自覚した。
「本当だよ。会えなくて、話せなくて、触れることが出来なくて……凄く寂しかった」
「私も……寂しかったです」
そう言って俯いてしまった桃ちゃんを、今までで1番強く抱きしめる。
桃ちゃんが壊れてしまうかもしれないって思いながらも、僕は力を緩めることが出来なかった。桃ちゃんをこの腕に感じたかった。
「もう絶対傷つけたりしない。約束する。だから、これからも僕と一緒にいてくれる? 」
「……はい」
強く抱きしめた腕から伝わる体温。桃ちゃんの髪から香る優しい香り。
「ねぇ、桃ちゃん。お願いがあるんだけど」
「なんですか? 」
「僕の名前呼んで」
「えっ……今、ですか? 」
「そう。今聞きたいんだ。お願い」
自分を奮い立たせるように僕をまっすぐに見つめた桃ちゃんが僕の名前を紡ぐ。
「奏士、先輩」
僕の名前を呼ぶ愛おしい声
もっと、もっと聞きたい
何度も、何度も呼んでほしい
他の誰でもない君に
僕だけに聞こえるように
君の愛らしい唇で
僕の名前を呼んで……
「これで仲直りだね」
僕の言葉にピンク色の頬をした桃ちゃんが柔らかく微笑んだ。
——やっぱり僕は、君が大好きだよ。
最初のコメントを投稿しよう!