恋する士英館高校

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綾side 「桃ちゃんがそう言ってくれるなら、ちょっと考えてみようかな」 桃ちゃんの可愛いお願いに、ついついそう言ってしまったけれど……考えても考えても、導き出される答えは「やっぱり無理」ってことだ。 まだマネージャーとして剣道部に籍を残している以上、私には部活に出る義務がある。 突然休部を願い出た私のせいで、部員たちには凄く迷惑をかけてしまった。だから、そろそろマネージャーとしての仕事をきちんとこなして、彼等に償わなければいけない。 頭の中ではちゃんと分かっているんだ。 あの時の私は、坂本先輩と高杉先輩にきちんと理由を説明することすら出来なかった。 ただただ泣いている私を、あの2人は大きな優しさで受け止めてくれた。 「気の済むまで休むといい。俺たちは井上さんが必ず戻って来てくれるって信じてる」 そう言って私の肩をぽんと叩いてくれた。 本当は、もう2度と剣道部に戻るつもりはなかった。 だから、こんな私を信じると言ってくれた坂本先輩の言葉とあの笑顔が、今でも私を苦しくさせる。 退部します。そう言えば良かっただけの話なんだ。 それでも——退部しますとはどうしても言えなかった。それは今でも変わらない。 私はこんな弱い自分が大嫌いだ。
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