恋する士英館高校

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綾side 自習。黒板には大々的にそう書いてある。つまりは、自主的に勉学に励めということでしょうか。 教室の至る所から聞こえてくる控えめな、けれどとっても楽しそうな笑い声。 クラスメイトたちはそれぞれに自習を満喫しているようですね。 さぁ、私は何をしましょうか。 「ねぇ、綾ちゃん。なんかお菓子持ってないの? 」 背後から私の肩を叩いたのは奏士だった。 「持ってるけどあげないよ」 「えー? 少しくらい恵んでくれてもいいじゃん。ねぇ、綾ちゃーん」 しつこく駄々をこねている奏士に、ついついため息が出てしまう。桃ちゃんは一体こいつのどこが良くて付き合っているんだろう。 部活の時や、ファンの子たちに愛想を振りまいている時は、僕ってカッコいいでしょ? 知ってる♡ みたいな顔をしているけど……普段は近所ですれ違う小学生となんら変わらない。 「綾姉ちゃん、お菓子ちょうだい‼︎ 」なんて言って、すぐお菓子をねだるところなんて全く一緒。 100歩譲って顔は可愛いとしても——身長は高いし、細身なのに筋肉質だし、竹刀を持つとヤバイくらいの殺気を放つし……可愛子ぶっても全然っ可愛くないんだからね‼︎ 桃ちゃんはほわんほわんしているから、どっちかというと、しっかり者の岡田君の方がお似合いな気がするんだよね。え、私だけ? 桃ちゃんにピンチが訪れた時に、奏士がきっちり助けられるとは思えない。こいつ、結構抜けてるし。 あ、そっか。岡田君にとっては、何事にも鈍感な奏士って好都合なのかもな。 桃ちゃんが傷ついてくれないと、自分の出番がないもんね。 このままだったら桃ちゃんが傷つくって分かってても、その事態が過ぎ去るまで岡田君は決して助けたりしない。 桃ちゃんが傷ついた時——初めて手を差し伸べる。 え……なに、この歪んだ愛‼︎ 私には理解出来ないかも。 奏士のことが大好きな桃ちゃん。 そんな桃ちゃんが大好きな岡田君。 くぅーっ、切ないね。 カッコいい僕をいつも演じている奏士と、若干歪んだ愛を好む岡田君は、得てして似ているところがあるのかもしれないな。 てことは、桃ちゃんがこれから先、岡田君にきゅんとしちゃうこともあるってことか……目が離せないね‼︎
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