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「さ、気を取り直して。俺、美羽の隣の席の中岡一樹。一樹って呼んでね。俺は桃って呼んでいい? 」
「うん、いいよ。一樹くん」
「ちょっと一樹。桃が可愛いからってさっそく手出さないでよ」
「なっ……。自己紹介しただけだろ? 俺が女子だったらみんな好きみたいに言うのやめろよっ」
「あっ。隼人さんだっ。隼人さーーーんっ」
窓の向こうに隼人さんを見つけた美羽ちゃんが、窓から身を乗り出す勢いで階下に手を振っている。
「おい。無視すんなよっ」
「はいはい。私、隼人さんのとこ行かなきゃいけないからさ。また明日ね、一樹。桃行くよっ」
美羽ちゃんが猛スピードで廊下を走って行く姿を、一樹くんと2人で見送る。
「あははっ。何あいつ。どんだけ先生のこと好きなんだよ」
吹き出すように笑った一樹君につられて、私も思わず笑顔になる。
「美羽ちゃんはもう何年も前から土方先生のこと大大大好きなの。全力で好きって感じが可愛いよね」
「へぇー、そうなんだ。ま、確かに。土方先生はイケメンだもんな」
「うん。だけど、土方先生は見た目だけじゃなくて中身も格好いいよ? 」
「マジか。俺なんて絶対敵わないじゃん」
「え? 」
「いや、何でもない。じゃあ、俺もそろそろ行くわ。また明日な、桃」
「うん。バイバイ」
一樹君に手を振りながら「岡田君に、明日もう1度ちゃんと謝ろう」そう心に決めた。
想像するだけで今から凄く緊張するけど……緊張しているのは岡田君も同じかもしれないよね。
せっかく隣の席になったんだもん。仲良くなれりたいし……よし。頑張るぞっ。
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