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prologue
4月
すっかり雪も溶け———季節は春
ここ———士英館高校にも
恋の季節が到来です
—————
「ねぇ、桃。知ってる? この神社の神様って縁結びの神様なんだって」
いつにも増してテンション高めの美羽ちゃんが、興奮気味に石畳の参道を歩いて行く。
私はその背中を駆け足で追いかけながら、参道を彩るように植えられているハクモクレンを見上げた。
まるで季節外れの雪が積もった様に、真っ白な花が満開に咲き誇っている。
私。花宮 桃。もうすぐ高校1年生。身長は153㎝で小学生レベル。
前を歩く親友の七瀬 《ななせ》美羽ちゃんは身長160㎝オーバーのモデル体型で、更に歩くのが早い。
そんな訳で、置いていかれないように必死です。
今日は、身長がもっと伸びますようにってお願いしてみようかな……。なんて。
「ということで、今日は恋みくじを引いて、更には絵馬も書いちゃいます。って、あれ? 桃、なんか疲れてない? 」
くるりと振り返った美羽ちゃんに、慌てて首を横に振る。
「大丈夫。疲れてないよ」そう言って笑ってみたけど、どうやら美羽ちゃんにはお見通しだったみたい。
「ごめん。興奮しすぎて早歩きになっちゃったね」
「ううん。私、足が短いから歩くの遅いよね。ごめん。
あーぁ、私も美羽ちゃんみたいにスタイル良くなりたいな」
「そんなのダメっ。ちっちゃくて可愛いのが桃なんだから、ずーっとそのままでいて。
間違っても背が伸びますように。なんて、神様にお願いしちゃダメだからね」
さ、行こ。そう言って私の手を掴んだ美羽ちゃんが、ゆっくりと拝殿の前に進み出ると、手を合わせて目を瞑る。
美羽ちゃんが願う事はただ一つ。
「隼人さんが担任になりますようにっ」
ただそれだけ。
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