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嵐が来るぞ!
とある山奥の研究所……。
そこでは中を獣たちがうろつきまわり、肉食動物と草食動物が戯れるという実に珍しい光景が展開されている。
赤い屋根、グレーの壁、磨かれた窓。
前後左右の隅、合計四か所に塔がそびえていて、その建物の大きさは山のふもとからでも十分確認できるほどである。
ここがふもとで騒がれている問題児(性格には問題大人)・Vの研究所である。
この研究所に入り、何度も階段を上り下りし、迷路のような道を通り、エレベーターにも何回も乗って、隠し扉や秘密の抜け穴に入り、そろそろ何階のどのあたりにいるのかすら分からなくなってきたころたどり着くのは、Vの研究室。
Vは研究をはじめ、寝るのも食事をするのもすべてこの部屋で行う。
だからわざわざこんな大きな建物を造らなくても、この部屋一つあればそれですむのである。
しかしわざわざこれほど大きな研究所を建てたのは、助手のノアの存在があったから部屋を一つだけにするわけにいかなかったことと、ノアが山から連れてきたり引き取ったりして面倒を見ている獣たちの生活スペースが必要だった…………というようにVは言い訳をしているが、実際にはノアや獣が住む前にこの研究所は完成している。
では、本当の目的は何か?
少年沁みた心を持っているVだからこその単純な理由が、そこにはある。
Vは、隠し通路や抜け穴がある家に住みたかったのである。
あちらこちらに秘密の抜け穴や隠し扉、決まった方法を使わなければ開かない扉の向こうのエレベーターなどを作りに作りまくった結果、部屋数とその面積の割には大きすぎる広い建物が完成したわけであった。
だから、Vの研究室へ行くのにも秘密の通路を通らずには到着することができない仕組みになっていた。
とにかくこの家はそんな感じの造りだったわけだが、今この家の主に獣の縄張りになっているスペースに、Vの助手ノアがやってきた。
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