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「何と、最大で1ミリメートル以内だ!」
ノアの顔から表情が消える。
さっきまでの拍手と尊敬と感心はどこかへ行ってしまった。
(やっぱり、博士の研究はマシなものがないんだ……。)
長い付き合いでVはまともな研究品を作れないと知っていながら思わず尊敬してしまった自分を恨む気持ちとVに対してがっかりする気持ちでうなだれながら、ノアは指摘する。
「博士……。1ミリメートル以内に探してる人がいたら、私でもわかります。」
「うん?そうかな?」
「もし1ミリメートル以内という間近に探している人間がいるのなら、わからない人間はいません。よって、この装置は不必要になります。」
Vの手から信じられないスピードで装置を奪い取ったノアは、装置をバキバキに砕く。
「ああ~!!」
Vが悲鳴を上げた。
「せっかくこの二週間不眠不休で頑張ったのに!何をするんだいノ……。」
Vの言葉が途中で止まった。
その原因は、ノアの体から放出されているすさまじい殺気にある。
「文句があるのなら、私が聞きます。でもその後、二度と文句が言えないようにする必要がありますけど……。」
可愛く微笑んでいるが、その目の奥では怒りと殺意が燃えている。
「いっ、いや!今のは私が悪かった!勘弁してくれ!」
「分かればいいんです。」
ノアの体からは殺気が消えたが、変わりにVの目からは涙があふれだす。
そのままテーブルにつっぷしたVの涙は、どんどん部屋の中にたまっていき、深さ約1メートルの池を作った。
Vが立ち直るまでには、もうしばらく時間がかかりそうだ。
終
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