消えた祠

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消えた祠

退院後、斎藤嵐は、行きつけのスナック蛇夢(じゃむ)で、風間平和と飲んでいた。 「あら、嵐ちゃん、平和ちゃん、いらっしゃい。嵐ちゃん、大変だったわね。もう、大丈夫なの?」  出かけてたママが帰ってきた。 「ほんとだよ。酷い目にあったよ。達也ママのお見舞い嬉しかったよ。ありがとね。」 「あーら、嬉しいこと言ってくれるじゃない?こんなのが行って、迷惑じゃなかったかしら。」 「看護師さんたち、オネエの本物見た!って騒いでたけど、退屈だったから、ちょうど良かった。」 「なら、良かった。これ、退院祝いね。急に来るっていうから、こんなもので、ごめんね。」 「わぁ、花は好きだから、嬉しいいよ、ママ。ありがとう。」 「ねえ、嵐ちゃん、なんか嫌なもの、貰ってきた?」 「えっ、ママ、どういう事?」 「なんか憑いてるわよ。」 「うそだあー。もしかして病院から?」 「入院中は、たくさんいるから紛れてて分からなかったけど。でも病院のって、独特の匂いというか、なんか違うのよ。だから、そういう匂いは感じないわね。その前からのじゃないかな?災難起こったばっかりなのにね。気をつけた方がいいわよ。」 「ママ、もしかしたら…あの祠かもしれない。」 「祠がどうしたのよ?」 「旅先でね、古びた祠みかけて、変な事お願いしちゃって。平凡な人生ってつまらな過ぎるから刺激が欲しいって、お願いしちゃった。そしたら、その帰り道から色々とついてない事ばかり起きて。それが、だんだんエスカレートして骨折。命があっただけでも、運が良かったのかな。」 「あらま、それかもよ。憑いてるのは、女性ね。うーん、でもなんか、動物的な。」 「動物って、キツネか狸?」 「ちょっと違うかな。なんかこう、生々しい感じ」 「なんだよ、それ、気持ち悪いな。そんなの全く感じなかったよ。それで、元に戻してって言おうと思って、その祠を探したんだけど、どこにも無かったんだ。それに、おかしいんだ、一緒に参拝したはずのこいつも、そんなの知らないっていうし、ネットで調べても、何にも出てこなくて。」 「そうだよ、そんなとこ行ってないじゃん。嵐、本当に大丈夫か?」 「じゃ、あの時、自分はいったいどこにいたんだ。」 「何度も言うけど、普通に大きな神社に参拝をして、お土産屋さんとか、ずっと一緒にいただろ。祠なんて無かったし。」 「土産屋は覚えているよ、そのあと、山道に逸れてく道に入ったら、道沿いに古びた祠があって、平和がこういう小さい祠の方が神秘的でいいって言ったんだろ。」 「だから、そんな事言ってないし、山道にも行ってない。」 「あら、あら、もう、喧嘩しないの。そういえばね、あなたと同じ事言ってた子がいたわね。ちょっと変わった女の子なんだけど、祠にある事をお願いして、また行こうとしたら、その祠がもう無かったって。あの子も色々あるからね。何かお願いでもしたのかしらね。」 「ほんと?やっぱり自分は間違ってないよ。だって、祠を検索してたら、お悩みサイトで、祠を知りませんかって質問してた人がいた。同じ経験してる人もいたんだよ。もしかして、達也ママが言ってるその子かも。」 「そうねえ、その子に今度聞いといてあげる。」 「ママ、お願いします!」
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