不穏な空気

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不穏な空気

3人の日常はキーダ王を起こすことから始まる。 「おはよございますわよ〜」 その言葉を合図に必殺技ローラーが始まる。 3人の連携技で毎回寝起きにボコボコにされるキーダ王はさぞかしスッキリ起床できていることだろう。毎秒感謝してほしい。 ただし横で寝ているザイドゥーンは絶対に起こさない。起こすと貯蓄してある「一日分のお野菜せいかつ」という野菜ジュースを6日分も一気飲みされてしまうからだ。 キーダ王に制裁を加えたあとは、ザイドゥーンの出過ぎたお腹を踏まないように寝床からそろそろと出る。 その後は朝食を優雅にとり、ヒャンマのスマホで各々が自撮りを5、6枚ほど撮ったあとで仕事へ出かける。 みどりちゃん王国の国民の内、仕事をしているのは吾輩たち3人とザイドゥーンだ。 しかしザイドゥーンは昼間は寝ているため誰も彼が仕事をしている姿を見たことがない。 本人は「ちゃんと仕事に行ってるんですけどねぇ(汗)」と言うが、ヒャンマたちは信用していない。 ちなみにキーダ王は国王なので仕事はせず、王国の中で毎日ニックシュガーという名前のぬいぐるみとコミュニケーション研修を行っている。(上達の兆しは見られない模様) 今日もいつものように顔を腫らしたキーダ王に敬意を払いつつ自撮りをこなすと仕事に行く前のルーティンとして3人は円陣を組んだ。 「吾輩〜ファイッオー!」 「わっちもいくわお〜れっつらどん!」 「小生は金が欲しいのじゃ!」 それぞれが協調性の欠けらも無い鬨の声をバラバラに上げると、すぐに三方向に散った。 仕事場は王国の外であるが、みな別々なのである。 今日もいつもと同じ業務があり、王国に帰ってからは明日の出来事に心を踊らせながらゆっくり就寝につくと、そう信じて疑わなかった。 しかし、3人が仕事へ向かっているその間、王国では予期せぬ事態が起こっていた。 そう、ザイドゥーンが昼間に目を覚ましたのである。
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