悲しみの涙は炎に焚べる(一)

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 しばらくして、吹雪は止んだ。  そして私は、外へと出た。降り積もった雪に膝下まで足が沈む。  とにかく町へと出て、"薪割り屋"から薪を買わなくてはいけない。 本当は近くの森の木を伐って薪にしたいけれど、そうはできなかった。"薪割り屋"が森に見張りを付けているからだ。どんな小さな森でもそこを管理する"薪割り屋"がいて、厳重に守っている。  たとえ小枝の一つでも、伐ろうものなら、すぐさまに捕らえられ、充分過ぎる制裁の後、町で晒し者にされる。だから、"薪割り屋"から薪を買うしかない。しかし、高騰する薪の値段のせいで、晒し者は後を絶たないのが実情だった。  "薪割り屋"は「限りある資源を公平公正に分配するため」と言ってはいるけれど、彼らの贅に尽くされた暮らしぶりから、謳い文句の通りとは思えなかった。  私は庭の桜に近づいて、触れた。  雪が降り積もって武骨な幹を隠してくれている。さらりと撫でて雪を払うとわずかに白く乾いていた。叩くと軽い音がする。中に何も詰まっていない、つまり木がもう水分を吸い上げていないときの音だ。  もう、枯れていた。
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