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そんな妄想すら、やんわりと浮かんでいるくらい、俺の人生の中にはことちゃんが詰まっていて、そこから消えてしまう想定なんて微塵もなかった。
あの瞬間までは―――
『お別れしよう、私たち』
何度も脳内に木霊する残酷なセリフが、忘れたいのに頭から出ていかない。
ぶんぶんと頭を振ってみたけれど、首筋を痛めそうになっただけだった。
最初に沸いたのは怒り。
遅れて悲しみ。
最後には、絶望しか残らなくて、体の中のパワーというパワーが全部出て行って、消えてしまったと思うくらい、何も残らなかった。
俺からことちゃんも引いたら、悲しいくらい何もない。
ことちゃんに出会うまで、どうやって生きていたのかさえ思い出せない。
いっそ、呼吸の仕方も忘れてくれたら良かった。
そうしたら一息に死ねたのに。
そんな後ろ暗い想いに馳せてしまう程度には、もうどうしようもなかった。
思い返せばこの3年と少しの間。
俺は誰よりも幸せだと思うくらい、幸せだった。
父さんも母さんも嫌いじゃない。
友達だって、いるにはいる。
信頼できる先輩や後輩だっていたんだ、確かに。
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