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ーーー元気ないな、やっぱり。
とぼとぼと歩く彼女の後姿をその後ろから見て、小さくため息を吐いた。
本当に、あんな酷いことをするつもりじゃなかった。
ただ―――羨ましくて、あんな風に想ってくれる彼女が欲しいと思った。
それだけだったのに、あんな風に思ってくれる彼女じゃなくて、彼女そのものがいいって……気づいたらすり替わっていた。
すり替わって、気が付いたら……手を出していた。
はっきりと分かっていた。
そういうことに慣れていない子だってこと。
大事に大事にされてきて、彼との関係を築いて来た子なんだろうって。
いつから付き合ってるんだろうとか、彼のどんなところが好きなんだろうとか、そういうことにすごく興味がわいた。
一体、彼女はなぜ彼を選んだのだろうかって。
僕との違いはなんだろうって。
「おはようございますっ」
とぼとぼ歩いていたくせに、警備員さんと顔があって元気よく挨拶していた。
そんなところも痛ましいのに、好ましい。
彼女の一つ一つが僕には可愛らしくて、愛らしいと思える。
どうして、あんな子が僕を見てくれないんだろう……そう思うと、またため息が出た。
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