2/14
201人が本棚に入れています
本棚に追加
/126ページ
 ーーー元気ないな、やっぱり。  とぼとぼと歩く彼女の後姿をその後ろから見て、小さくため息を吐いた。  本当に、あんな酷いことをするつもりじゃなかった。  ただ―――羨ましくて、あんな風に想ってくれる彼女が欲しいと思った。  それだけだったのに、あんな風に思ってくれる彼女じゃなくて、彼女そのものがいいって……気づいたらすり替わっていた。  すり替わって、気が付いたら……手を出していた。  はっきりと分かっていた。  そういうことに慣れていない子だってこと。  大事に大事にされてきて、彼との関係を築いて来た子なんだろうって。  いつから付き合ってるんだろうとか、彼のどんなところが好きなんだろうとか、そういうことにすごく興味がわいた。  一体、彼女はなぜ彼を選んだのだろうかって。  僕との違いはなんだろうって。  「おはようございますっ」  とぼとぼ歩いていたくせに、警備員さんと顔があって元気よく挨拶していた。  そんなところも痛ましいのに、好ましい。  彼女の一つ一つが僕には可愛らしくて、愛らしいと思える。  どうして、あんな子が僕を見てくれないんだろう……そう思うと、またため息が出た。
/126ページ

最初のコメントを投稿しよう!