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結局のところ、僕には見る目がなかったのか、あったのか。
そんなことにまで想いを馳せながら、あの日を思い出してずきりと胸が痛む。
バスで彼女の手を握った2時間。
そのぬくもりに触れて、ホッと息を抜くことができた。
でもその息抜きをさせてくれるほどの力が彼女にあったのは……多分、彼のおかげなのだろうと今ならわかる。
そして、それを奪えるほどの力が僕にはないことも、理解できた。
きっと……僕には触れられない領域。
それが池波琴莉なのかなって。
弱っていたのはお互いで、だからうっかり踏み込んでしまった。
踏み込んでしまって、後悔して。
だけど、触れた優しさに幸せを感じたのも確か。
だからいつか―――君が僕の、ちょっとしたパワースポットにでもなってくれたら、いいなとか。
そんな関係に、落ち着ける日が来ることを贅沢にも願ってしまう。
でもそれくらい望んでも許してくれないだろうか。
もう決して、ピヨちゃん以上には呼ばないから。
ごめんね、ことりちゃん。
どうか君に、幸せが戻ってきますように。
本当に、本心で、心からそう願ってる。
そしていつか、僕にも……君が彼を想うくらいの気持ちで想ってくれる人と出会えたらいいなと、希うよ。
君には最低な先輩だったかもしれないけれど―――僕は君に出会えたことを心から感謝している。
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