一週間の間

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「よし、昼飯も食ったし一旦部屋に戻るか。置くもんも置きたいし」 父さんが友達から貰った饅頭を置きにいくため俺達は一旦旅館の部屋に戻ることにした。旅館に着き母さんは外で「待っとく」と言って俺と父さんの二人だけで部屋に向かった。その部屋に向かっている間に父さんが「なぁ、赤。あの店で母さんと何を話してたんだ」と聞かれた。俺はやっぱり聞こえていたのかなと思い母さんに言ったことを父さんにも言った。 「ごめん……まだ言えないんだ」 「……そっか」 少し寂しく父さんは言うと頭を手に乗せて「いつでも言えよ」って言ってくれた。その言葉が俺はとても嬉しかった。 そしてようやく部屋に着いて父さんは机の上に饅頭を置き、俺は自分のカバンに饅頭を入れついでに私服に着替えた。父さんは確認するように俺を見ると「じゃあ行くか。母さん待たせると悪いし」と言って部屋を出た。父さんと他愛の無い話をしながら歩いているといつの間にか母さんいる所まで到着していた。それからは三人でふらふらと何処かに歩いた。食べ物屋に雑貨屋等、着物を売っている店がいっぱいあった。父さんと母さんの二人から五千円ずつ貰いこれで何か好きなものを買えと言われた。それから別行動夕方になったら昼に食べた鰻屋で待ち合わせと言われ俺は一人さまよい歩いていた。一応何かあったときとかに持っていた携帯の時間を見るとまだ一時半過ぎだった。大体、五時から六時までの間に何処か暇を潰せそうな所を探すと簪を売っている店が目に入った。俺はなんとなくその店に入ると綺麗な簪が並んでいた。 「いらっしゃいませ。何かお探しでしたらなんなりと仰ってください」 「は、はい」 俺は彩に似合いそうな簪を探していた。彩は明るくて綺麗で、イメージで表すなら桜のような感じ。俺はそういう簪がないか定員に聞いてみる。 「すみません。ここに桜のようなイメージをした簪ってありますか?」 「桜ですか?…… 少々お待ち下さい」 お店の定員は店の中の奥に入り何かガタゴトと物音がありそれからしばらく静かになる。すると少し埃を被って定員の人は出てきた。手には何か箱みたいなのが持っていてそれを俺に見せてくれた。 「これは?」 「これは私の父が最後に作った簪です。その時が丁度、桜が満開な春でした」 硝子で作ったのか桜の花に枝は木製だが輝いていてまるで本物の桜のようだった。 「でも、何で俺にこれを見せてくれたのですか?」 わざわざ埃を被ってまで何で。 「いえ、深い理由はありません。ただ貴方は真剣に簪を見ていたので其程までに想いを寄せる好きな人がいるのだなと」 え? 何で俺が。いや確かに彩の事は昔から好きだけど何でこの人は分かったんだろう。 「な、何で分かったんですか」 俺の顔はきっと赤くなっているはずだ。自分でも分かるぐらい顔が熱かった。
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