一週間の間

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「ほな、俺も出来る限り教えたるで。俺は将来、立派な和菓子職人になるのが夢なんや。せやから今こうしていろんな体験やったり勉強したりしてんねん」 俺はとても羨ましいと思った。とても、立派な夢を持っていて少し彼に嫉妬してしまう位、羨ましいよ。 「阿川さんの夢、とても良い夢だね」 「朔でええで。俺も赤って呼ばしてもらうわ」 御言葉に甘えて俺は彼の事を朔って呼ぶことにした。それから朔と色んな話をしていると少しずつ時間が経っていき人も少しずつ増えていった。子供連れの親や、朔と同じように将来職人になる高校生の子やお年寄りまで来ていた。それでようやく人も集まり紅葉さんがやって来た。 「それでは、これより今回和菓子体験の担当をする事になった紅葉です。皆さんよろしくお願いします。では、皆さんはエプロンに着替えてください。エプロンが無い方はこちらにありますので取りに来てください」 俺はエプロンが無いのでハンガーに掛けてあるエプロンを借りることにした。皆がエプロンに着替え終わると紅葉さんはそれを確認し手を二回叩いた。 「では、今回和菓子を作るテーマは花です。どんな花にするか決まったら、材料と調理器具はこちらにあるのでこちらこら持っていって下さい。その代わり一人ずつ順番に並んでお願いしますね」 そう言われて俺はどんな花にするか考えると隣に居た朔がもう決まったのか材料と調理器具を取りに行った。 「……花か。幸を花でイメージすると……」 「なんや、まだ悩んでるんか?」 材料と調理器具を持って戻って来た朔は俺が悩んでいるのを気にしてくれたのか心配してくれた。 「花は今さっき決まった。後は材料と調理器具を取りに行って作るだけだよ」 「何の花にしたんや」 「……シロツメクサ」 俺はちょっと恥ずかしがりながら朔に言うと朔は「めっちゃええやん!」と大阪弁でそう言ってくれた。 「ほなはよお材料と調理器具取りに行くで。シロツメクサやったら調理器具もそんなに要らへんし」 朔は俺の手を引いて材料と調理器具の置いてある場所に並んで選んでくれた。材料は白餡と白玉粉とグラニュー糖に水と緑色をした餡があったがこれは抹茶味の餡かな。調理器具は裁縫道具とかにも出てくる糸切鋏に似ている道具とお鍋、ゴムベラ、ボウル、本当に材料や道具もそんなにいらないと俺はもしかしたらこれなら出来るのではと自信が出てきたがそう甘くはなかった。 「ほな、赤の作ろうか。紅葉さんは皆のを見て回るみたいやし」 「よろしくお願いします。あっ、でも、朔のはいいのか?」 「俺は赤の和菓子を教えながら作るさかい気にせんでええで。おっしゃ! ほな、まずは火取りをするで」 「火取り?」 俺は火取りと言う言葉に動揺してしまうが朔はそれを丁寧に教えてくれた。 「火取りちゅんは餡の水分を飛ばす作業のことや。簡単やけど大変な作業やで」 成る程と俺はコクコク頷き作業を始める。 「ほなまずは、ボウルにあんこを入れて今のあんこの色をよー覚えてな」 「何であんこの色を?」 「このあんこにレンジで加熱して水分を飛ばすねん。それで焦げたりとかしたら大変やろ」 「成る程、和菓子を作るのも一苦労だな」 俺は朔に言われた通りボウルにあんこを入れてレンジに入れ加熱した。 「時間は二分。二分経ったら一旦出してゴムベラで湯気が落ち着くまでよう混ぜる。止めたらアカンで、でないとあんこの一部が固くなってまうからな」 俺は休まずあんこを混ぜ続けたが結構大変だった。 「良い感じになってきたな。ほな次はペーパーをボウルの上に被せるように乗せてもっかいレンジで二分加熱する。加熱したらまたさっきみたいによう混ぜて混ざったら指であんこを触ってあんこがくっつかなかったら完成や。赤、何とか手順覚えた?」 「……あ、あぁ。何とか」 和菓子を作る大変さを知り俺は上手く作れるか不安になっると朔が俺の背中を思いっきり叩いてきた。 「なーに暗い顔してんねん。そんなんで作っても相手も喜んでくれへんで」
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