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俺はいつも通りの放課後、学校にある美術室で絵を描いていた。
もうじき夏休みが入る頃、暑い美術室の扉がいきなり開き俺は驚いてその扉の方に向くと俺の幼なじみの彩が汗をかきながら息を切らして俺の方に近付いてきた。
「せーき! やっぱり居た! もう探したんだからね。先生が放送で呼んでたよ、聞いてないの?」
「えっ、放送? ごめん、聞いてないな」
「どうせ絵に夢中だったんでしょ」
彩はまたいつものことのように言い、怒りながら俺の頭にチョップをする。それが凄く痛くて俺は頭に手を抑えたが何故か笑ってしまった。
それを見た彩はため息を吐きながら呆れていたが、俺が笑っているのに釣られ彩も少し笑っていた。お互い笑い終わると彩は俺が描いている途中の絵を見て首を傾げた。
「これは何の絵なの?」
「これはうちの学校の教室をモデルに描いた絵だよ。でもこれだけじゃ何か物足りなくてね、全然アイディアが浮かばないんだ」
「へぇ~。じゃあ、わた」
彩が何か言いかけた時に美術室のドアからノックの音が聞こえ俺と彩が振り返るとそこにいたのは幸だった。
幸は中学に入ってから知り合ったと言ってもたまたま席が隣で俺が一方的に話しかけただけだったが、お互いに少し気があって一緒にいることが多くなった。幸は不機嫌な顔をしながらこちらを見て呆れながら俺達に話掛けた。
「全く、お前達は何をやっている」
「あ~幸どうした。不機嫌な顔をして」
「先生が呼んでいる。彩、お前はこいつを呼びに言っていたんじゃないのか」
「はっ、そうだった」
幸は俺達に呆れながら、「とにかく先生が呼んでいる」とだけ言い残し先に帰っていった。俺は幸に言われた通りに急いで職員室に向かって走った。職員室に着いてノックをし「失礼します」と言うと担任の先生が椅子ごとこっちに向いた。
「お前は、何回も放送しただろ。こっちも暇じゃないんだぞ」
「すみません、つい夢中になっちゃって」
「また絵かよ。お前はもう少し自分の将来の事を考えたらどうだ。絵だけじゃ食っていけねぇしお前自信が困るんだぞ。俺はお前のために……」
もう聞き飽きた台詞。
「先生、俺の為に言ってくれてありがとうございます。でも、俺の人生は俺が決めます。それじゃ、失礼します」
「おい待て! まだ話は……」
担任の先生が言う前に扉を閉め俺は教室に戻ると彩が待っててくれた。
「彩、待っててくれてたのか? ありがとな」
「うん、一緒に帰ろうかなっと思って。それにあの自己中教師の事だからまた赤に大学の話を持ち出したんでしょ」
担任の先生はよく俺に大学のパンフレットを持って勧めてくる。でも俺は大学には行かないことにした。
「赤は頭も良いし運動も良いからしょうがないよ」
「またまた、彩と幸だって頭良いし運動も良いだろ」
なんて他愛ない話をしてると俺はあることを思い出す。
「彩、すまない。ちょっと忘れ物したんだが取りに行ってもいいか?」
「いいよ? 珍しいね。赤が忘れ物するなんて、物はよく落として失くすのに」
「返す言葉も無いよ」
廊下を別方向で歩くと窓の外の空を見るとだんだん赤くなっていく。赤は俺の一番好きな色で少し見惚れていると彩が俺の背中をバシッ!と叩いて正気に戻ったが結構痛かった。
「夕陽に見惚れてないで早く取りに行こうよ」
「ごめんごめん」
そして、また歩くと美術室に着いた。俺はまだ描いている途中の絵を持って帰り家で描くことにした。
「忘れ物ってそれ?」
「あぁ、家で描こうかと思ってね」
彩は俺の隣で不思議そうに俺の絵を見た。
「またコンクールに出すの?」
「あぁ、そのつもりだよ。でも、正直自信ないんだ」
「大丈夫だよ。赤の描いた絵はどれも凄く素敵だし次のコンクールも絶対優勝だよ」
「そうだと良いな」
正直、コンクールとか優勝とか興味なかったし自信が無かったが、彩が無理やりコンクールに出してくれたことに俺は感謝している。それからは色んな絵のコンクールに出しては優勝して彩が喜んでくれた。けど次のコンクールで出そうかとても悩んでいた。
「私ね、赤の描いた絵はどれも意味があるんだと思うんだ。それでね、私。赤の絵を見て思うんだ、あー赤はあの時こんなことを考えながら描いていたのかなって。だから赤は赤の気持ちに素直になりなよ」
「俺の気持ちか。彩、ありがとう。ちょっと自信出たよ」
俺は彩に礼を言うと彩はニコニコと笑いならが腕を組んだ。そこが彩の可愛い所でもある。
「これで優勝したら私のおかげだからその時は何か奢ってね」
「わかった、彩の食べたいもの好きなだけ奢るよ。勿論、幸も誘ってな」
「やったー! 赤、絶対優勝してね。そして出す前に私に絵を見せること! 良いね?」
「わかった、完成したら必ず一番最初に彩に見せるよ」
「楽しみにしてるよ。じゃあ、またね~」
彩が手を振りながら家に入っていき俺も自分の家に帰って部屋に行き絵を机の上に置いた。
「俺の気持ち……か」
俺の気持ちは不安と悲しみでいっぱいだよ
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