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「相変わらず、向日葵姐さんは大人気ね」
「あの、紅葉さん。向日葵さんって和菓子職人なんですか?」
俺は恐る恐る聞いてみると紅葉さんは「そうですよ」と言った。何でも昔は色んな和菓子の店に弟子入りをして修行をして自分で店を持ち始めたと紅葉さんはそう言った。
「赤君、どう? 初めての和菓子作り」
「とても楽しいです。でも、やっぱり作るのは大変だなと思いました。桜餅しか作ったかとがないので。それにここは皆で教えあって作ってるようにも見えました。とても変わった体験場所だと思います」
「ふふ、楽しんでくれて良かった。赤君の言う通り、ここは皆で教えあって和菓子を作る体験でもあるの。本来、和菓子は自分の考えた作り方、アレンジを考えそれが認められればお店の商品として出せるの。でも、ここは違う、皆で意見を出しあって一緒に作るのがこのお店のやり方なのよ」
そうか、だからあんなに和菓子がとても綺麗に見えたのか。
「私も一人で新作の和菓子を作って悩んだ時、皆協力して一緒に考えて作ってくれたんです。それでその和菓子がお店に出すことが出来ておかげで行列が出来る位お客さんが来てくれました。これも皆のおかげだなぁ~って」
紅葉さんは俺と向日葵さんの間に入りそう言った。昔を思い出し紅葉さんは小さくくすくすと笑う表情が何だか子供っぽく見えた。
「午後は私も参加するから、赤君がどんな和菓子を作るのか楽しみね」
「初心者なので、上手くはないですよ」
「皆そうよ。誰だって上手くいかないわ。朔君もね、昔は小さい頃“向日葵姐さんみたいな和菓子を作る”って言ってたけど中々上手くいかなくてよく泣いて私達のお店に来てたわ」
「わぁーー! 向日葵姐さん、 俺の黒歴史を言わんとってや! 俺はもう泣き虫卒業したんやで」
向日葵さんは微笑みながら俺にそう言うと近くでその話しを聞いた朔は顔を真っ赤にしながらアワアワと両手を振り俺と向日葵さんの間に入った。紅葉さんもくすくすと笑いながら俺に朔が小さかった頃の話をした。
「ありましたね。あの時の朔君はとても頑張り屋さんだけど失敗して中々上手くいかなかった時はよく泣いていて、でも向日葵姐さんが作った和菓子を食べると嘘のように泣き止むのですよ」
「紅葉さん、頼むから止めてくれ。俺もう……」
朔は両手、両膝を床に付いて顔は見えないが……何だろう。朔がとても白く見える。
「よりによって赤にそれを話すなんて。向日葵姐さんも紅葉さんも酷いわ」
「ま……まぁ、誰だってあるよ。俺もそう言う時があったから、あまり気にするなよ」
俺は朔の肩に手を置いてフォローすると朔は涙目になりながら顔を上げて俺に抱きついて来て正直俺は驚きながらしりもちを付きながら朔を支えた。
「赤! ありがとう、お前だけが俺の救いや!」
「お…大げさだな。誰だって黒歴史の一つや二つはあるもんだよ」
俺は朔の背中を擦るようにするとそれを一部始終見ていた向日葵さんと紅葉さんがなにやら笑っていた。そして、くすくすと小さく笑った紅葉さんは朔の脇から手を入れ持ち上げるようにして椅子に座らせた。
「ハイハイ、朔君。向日葵姐さんが作った和菓子を食べて機嫌と元気を出してください。赤君も好きな和菓子取って召し上がってください」
「は…はい」
俺は紅葉さんが朔を持ち上げた事に驚きながら立ち上がり朔の隣の椅子に座った。
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