夏休みの予定

2/2
7人が本棚に入れています
本棚に追加
/29ページ
「……い」 誰かの声が聞こえる 「お……ろ」 誰だ? 「赤! 起きろ!」 幸は何処か焦った顔をしていた。俺も汗だくで何が起きたのかさっぱりだった。 「大丈夫か? 魘されてたぞ」 「あぁ、平気さ。なんか変な夢を見ちゃって」 「そうか、授業はもう終わったぞ。六時間目は理科だ。移動するぞ」 次は移動授業かと気だるげにしながら理科の教科書とノート、そして筆箱を持って幸と一緒に移動した。何の夢を見たのか思い出せない。でも嫌な夢なのは確かだ。そう考えているといつの間にか理科室に着いたがまだ顔色は悪かった事ぐらいは自分でもわかった。 「大丈夫か? 保健室で休んだらどうだ。先生には俺が言っておく」 「悪いな。じゃあ御言葉に甘えてそうするよ」 「そうしろ。明日の海に行けなくなったら、彼奴が愚図るからな」 これ以上幸に心配される訳にもいかないと思い俺は保健室に向かったが保健室の先生はいなかった。 「あれ? 居ないな。仕方ない、事情は後で話せばいっか。ちょっと休ませてもらいます」 俺は保健室のベッドで横になったがまたあの夢を見るんじゃないかと思うと怖くて眠れなかった。 「明日の海、行けるかな」 俺は目を閉じてそう呟いた。でも眠れなかった、何も考えないでいると刻々と時間だけが過ぎてあっという間に六時間目の授業の終わりのチャイムが鳴る。 「失礼します。保健室の先生はいないのか、おい迎えに来たぞ。体調はどうだ?」 「五時間目の時に寝たから中々寝付けなかった」 「そうか、ほら帰るぞ。彩が門の前で待ってる」 幸は俺の荷物を投げてきた。 「あぁ、そうだな」 俺も靴を履いて幸と一緒に正門に向かうと彩が此方に気づいたのか手を振って俺達の名前を呼びながら此方に来た。 「赤~! 幸~! 早く帰ろう」 「彩、五月蝿いぞ。もう少し静かに呼べんのか、それと暑苦しからあまり引っ付くな」 「彩は元気だね」 彩は俺達の腕を自分の腕に通して急かすように急いでいた。そして勿論俺達は明日の海に行く話をしていた。 「明日はお父さんが車で連れてってくれるから朝早くが良いな」 「大体何時にするのか具体的に教えろ」 「8時で良いんじゃないかな。集合場所は彩の家で」 「良いよ~。お父さんにも言っておく」 時間と集合場所は決定した。後は明日になるのを楽しみにするだけだ。三人で話ながら帰っているといつの間にか彩の家に着いた。 「それじゃな、彩。遊園地の話は明日でも良いか」 「遊園地は別にいつでも行けるからな。それと彩、明日は弁当でも作ってやる。楽しみにしとけ」 「幸、本当! 明日が楽しみ~。幸のご飯本当に美味しいし。じゃあまた明日」 俺達二人は手を振り、自分の家に帰った。幸も自分の家に帰って、今頃は弁当の献立でも考えている所かもしれない。俺も明日に持って行くものを用意して一通りは準備出来た。後は父さんの所に行ってカメラを借りるだけだ。そして俺は父さんの所にいるリビングに向かった。 「父さん。父さんのカメラ借りていいかな? 明日彩と幸と一緒に海に行くんだ」 「そうか、良いよ。ちょっと待ってろ。何処に閉まったかな?」 父さんは母さんと一緒に使ってる部屋に向かって押し入れの戸を開けカメラを探してくれてる。その時に運悪く母さんが来てしまった。 「何やってるの?」 「赤が明日友達と海に行くみたいで、それでカメラを貸してほしいって言うから探してるんだ」 「良いわね、あんたは行きたい所に行けて。私なんて友達も居なきゃ遊びにも行けなかったのに」 母さんはまた自分の昔の話をしてくる。自分が出来なかった事を俺に酷く当たってくる。仕方ないさ、母さんにとって俺は妬ましいのかもしれない。母さんが出来なかった事を俺がする事に嫉妬しているのかもしれない。 「お前、その言い方はないだろ。赤だって友達と思い出を作りたいし。それにお前と赤は関係ないだろ。こいつはこいつだ」 「………父さん」 「勝手にしなさい」 母さんはそれだけ言ってリビングに戻ってしまった。 「赤。母さんが言ったことは気にするな。それとカメラあったぞ」 「ありがとう父さん。俺は平気だよ」 父さんは心配しながら俺にカメラを渡してくれた。俺はカメラを受け取って部屋に戻った。使い方は父さんが使ってるのを見て大体は覚えている。明日持って行くものはこれで完璧だ。水着と着替えの服、財布と携帯にスケッチブックと鉛筆と消しゴムにカッターナイフの入った筆箱に父さんから借りたカメラ。後は明日になるのを待つだけだと思い俺はベッドで横になった。 自然と目を瞑り、いつの間にか睡魔に襲われ俺は眠ってしまった。そしたら、ピッ、ピッ、と機械のような音と彩と幸の泣いてる声が聞こえた。そして、病院でまるで死んでいるかのように病室のベッド寝ている俺と泣いている二人の姿が見えた。 ーー嫌だ、赤。起きてよーー 俺が病院のベッドの上に寝ている。あぁ、これは夢か。本当に嫌な夢だ、正夢だったらどうするんだ。いや本当におきるかもしれないな。 ーー赤、お前は何故黙っていたんだ。どうして言ってくれなかったーー 幸でも泣くんだな。俺の夢はずいぶんと都合の良い夢を見るもんだ。早く覚めてくれよ、見たくないんだ。彼奴等の悲しむ姿を俺は見たくない、夢でも、現実でも。俺は暗闇にうずくまりながら泣いていた、そしたらとても五月蝿い音が俺の頭に鳴り響いた。 目を開けると携帯のアラームが鳴り響いてスマホの画面には7時半と出ていた。俺はベッドから起きてリビングに向かった。リビングはとても静かで人の気配すらも感じない位だった。 「まだ父さんと母さんは寝てるか。取り敢えず簡単なものでも作るか」 俺は朝食を作るために冷蔵庫を開け、ベーコンと卵を出した。俺でも簡単に出来るベーコン入りの目玉焼きにしようと思う。フライパンをだし軽く油を引いて火をつけ中火にする、最初にベーコンを入れてその上に卵を割って一緒に焼き水を少し入れて蓋をする。その間にインスタントの味噌汁を味噌汁用の器に入れてお湯を注ぐ。蓋を上げて目玉焼きの様子を見、いい感じの色になってきたらフライ返しでお皿に移しテーブルに置いた、次はお茶碗にご飯をすくう。 「まぁ、幸程じゃないが。まぁまぁかな、いただきます」 俺は黙々と自分で作った朝食を食べた。 「ご馳走さま」 食べ終わり、皿を洗って。部屋に戻り私服に着替えて荷物を持って玄関まで向かう。靴を履いて俺は立ち上がり振り返ってまだ部屋で寝ている両親二人に向かって言った。 「行ってきます」 そして玄関のドアノブに手をかけて開き、彩の家に向かった。夏の朝でも少し肌寒く感じ、もうじき彩の家につく頃には幸は彩の家の前にいた。
/29ページ

最初のコメントを投稿しよう!