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「ちょっと、何処に行ってたのよ」
「わりぃわりぃ、これを買ってたんだ」
俺が言う前に母さんが俺の前に立って少し怒っているのか眉間にシワをよせていたが父さんはへらへら笑って俺と母さんに何か渡した。これは……饅頭?
「父さん……これって、饅頭?」
「ただの饅頭じゃないぞ、結構有名な饅頭屋で中々食うことが出来ない。それにいつも予約がいっぱいで手に入りにくいんだ」
「そんなお饅頭をなんであなたは買うことが出来たのかしら」
母さんの言葉に俺もそれは疑問に思った。そんな有名な饅頭が食えるのは嬉しいがどうやって手に入れたのかはとても気になる。
「じ、実は、そこの店がたまたま俺の友達の店で挨拶がてらに顔を見せたらすげー量の饅頭くれてな。家族で食ってくれって渡された」
父さんの片手には箱の入った袋があり少し重いのかぷるぷる手が震えている。
「父さん、それ二つ位貰って良い?」
「お? お土産か、良いぞ。ほら」
「ありがとう」
俺は父さんから饅頭の入った箱を二つ貰った。二人のお土産にしたら喜んでくれるかな、特に彩は。
「よし、じゃあ次行くか」
「父さん、次は何処に行くんだ」
俺がそう質問すると笑うだけで教えてくれなかった。また父さんの後を着いていくように歩いていると香ばしい匂いがどこからかして辺りを見渡すと鰻屋があって俺の腹の虫がないてしまい腹を押さえてしまった。
「お、なんだ腹減ったのか? じゃあ、そろそろ昼だし。食ってから行くか」
「良いの? 父さん」
「あぁ、俺も腹減ったしな。母さんも良いだろ」
「別にいいわよ」
父さんは母さんの許可も取り「じゃあ行くか」と言いながら父さんは母さんの肩を掴み俺は腕を掴まれ店に入った。
「いらっしゃ~い! 何名様ですか」
「三人だ」
「あいよ~、三名様入りまーす」
「「「はーい」」」
ちょっと気の強そうなおじさんは鰻を焼きながら何名か聞いて別のお店の人が席を案内してくれた。案内してくれた席に座るとそこは窓越しだけど外が見えてその外は店の庭なのか池や池の中にいる色鮮やかな鯉、松の木が見え俺はつい見惚れてしまった。
「見惚れたか?」
「うん、凄く綺麗で……落ち着くよ」
「俺もこの庭は母さんの次に好きだよ。何かを悩んでたり不安な時はよくこの庭を思い出しているんだ。お前もそう思うだろ」
「うん」
俺は景色の中でこんなに綺麗で素敵なものを生まれて初めて見た。彩達にも見せてやりたいと思うと俺はあることを思い付くと店の店員が注文と取りに来た。
「ご注文はお決まりですか」
「俺はうな重で、母さんと赤は?」
「ざるそばの天ぷら付きで」
「俺は父さんと同じもの」
「ご注文はお決まりですね。少々お待ち下さい。店長~! うな重二人前お願いします!」
「あいよ!」
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