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第3話
「理事長、深山くん無事に到着でs」
「ひろくーーーん!!」
有栖川さんの言葉を堂々と遮って、獅之助さんは僕に抱きついた。
「はぁん……会いたかったよ、ひろくん…」
「あ、えと…えへ、僕もです、獅之助さん」
「理事長…(怒)」←
ん!?有栖川さん、怒ってる…!?
さっきの爽やかな有栖川さんはどこへ…
「アリスくん、ひろくんが怖がってるからそんな顔しちゃ、めっ!だぞ」←
「……はぁ(ため息)」
「し、獅之助さん、一旦離れましょう?」
「えー」←
あわわ…
有栖川さんの眉間のシワがまた深く…!
「仕方ないなぁ。よし、アリスくんお茶お願い!」
「ハイハイ」
有栖川さんは、呆れたように返事をして別室へ消えた。
「ひろくん、そこに座って」
「はい」
言われた通りソファーに腰掛けると、獅之助さんは僕の向かい側ではなく、何故か隣に座った。
「さて、ひろくん。改めて入学おめでとう」
「あ…、ありがとうございます。獅之助さんが声をかけてくれなかったら…」
「ふふ、私も嬉しいよ。ひろくんがいい返事をしてくれて。前髪も、ちゃんと伸ばしてきたし」
獅之助さんはそう言いながら、僕の前髪に触れる。
「あの、なんで前髪を伸ばしてって言ったんですか?」
僕がそう問いかけると、獅之助さんは「それはね…」と言って、僕の前髪をかきあげた。
(ちゅ、)
「…っえ」
「こういうこと、されちゃうからだよ?ひろくん」
キ、キスされた…!
「え、え…?」
「ふふ、分かってないみたいだね…ん、」
「んぅ、!?」
また…!
ちゅ、ちゅ、と角度を変えてキスされる。
「ん、し、しのすけさ、ふぁっ!?」
ぬるっとしたものが、僕の唇を割って口の中に入ってくる。
こ、これ、舌だ…!獅之助さんの…!
「はっ…ぁ、ちゅ、んん…、」
「ちゅ、ふ、ん…」
なに、これ…
こんなの、知らない…ゾワゾワする…
変な気持ちに…!
「理・事・長」←
「(ビクゥ)や、やあアリスくん!」
「何がやあアリスくんですかアンタ!生徒に手出して!!」
「いんやぁ〜止まんなくなっちゃった」
「なっちゃったじゃないです!ったく…深山くん、大丈夫ですk………!?」
有栖川さんが僕を見て固まる。
?どうしたのかな
「ん?おっと」
獅之助さんがそんな様子を見て、僕の前髪をサッと直す。
「ふふふ」
「はー、なるほど…(これはかなりキますね)」
「??」
有栖川さん、顔赤いような…
熱?
「さぁーてひろくん!学園について少し話しておこうか」
獅之助さんはそう言うと、真剣な顔になる。
「資料を読んでるかと思うけど、ここは男子校。しかも全寮制のね。
中学から男子校に分かれるシステムになっていて、長い間同じ時間を隔離された学園で過ごしているから、恋愛対象がそういう風になりやすい。
さっきみたいに、いきなりキスしてくる奴もいるし、それ以上のことを求めてくる奴もいないわけじゃない。だから、特に気を付けてね。」
少し、背筋が凍った。
キスより、酷いこと…。ぼ、暴力(違います)
本当に気を付けなきゃ。
「だから前髪は死守してね!何がなんでも。顔さえ見られなかったら、多分大丈夫だから。」
「た、多分…」
「寮のルームメイトも配慮して、同じクラスの子にしたから。」
「すみません、何から何まで…」
「いいんだよ、ひろくん。ひろくんの為だったら何でもするよ!」
獅之助さんは僕の手を握って言った。
「アリスくん、例のものを」
「はい」
有栖川さんがスーツの内ポケットに手を入れると、そこから1枚のカードが出てきた。
「これはカードキーです。部屋の施錠だけでなく、学生証にもなったり、学食でも使えるので大切になさって下さい。」
「あ、ありがとうございます…」
そんな凄いもの貰っちゃっていいのかな…
「さて!アリスくん、ひろくんを寮へ案内してやってくれ」
「分かりました。」
「ひろくん、君の活躍を期待してるよ!」
「…っ、はいっ!」
獅之助さんや母さんの期待に応えられるように頑張ろう…!
そんな思いを胸に、理事長室を後にした。
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