プロローグ

1/1
205人が本棚に入れています
本棚に追加
/23ページ

プロローグ

「しーくんね、花ヶ前(はながさき)学園に行くんだって」 小さい頃、母がそんなことを言っていたことを思い出した。 そこがどんな所かは、当時5歳だった僕には分からなかったけど、しーくんと会えなくなる事だけは何となく分かった。 結局、会えたのは長期休業中の少しの間だけ。 中学に上がったらもっと会えなくなった。 「母さん、花ヶ前ってさ、高校からでも行けるのかな?」 「うーん、不可能じゃないけど難しいわよ〜?」 「そっかぁ…」 「ふふ、しーくんに会いたいのね〜?」 「うん…」 そんな会話をしている時だった。 運命の電話がかかってきたのは。 『 深山尋衣(みやま ひろい)くん、あなたを花ヶ前学園高等部の外部特待生として、入学を許可致します。』 電話の向こうの人物は、淡々と告げた。 この時、時期的に言うとまだ中3の夏。公立どころか、私立入試すら始まっていない。 「あの、僕、受験してないのですが…?」 『それは心配ないよ、ひろくん。』 さっきの人とは、違う声。 しかも知ってる声だ。 「し、獅之助(しのすけ)さん…!?」 『やぁひろくん、久しぶりだね』 「獅之助さんがなんで…」 『あれ、知らない?私は花ヶ前学園の理事長で、高等部の学長しているんだ』 「えぇっ!」 『ははは』 「で、でもなんで僕が選ばれたんですか?」 『…私が推薦したんだよ、ひろくん』 獅之助さんが、僕を…? 『君の成績を見たけど、流石。とても優秀だよ。ウチにいてもおかしくないレベルだ。それに、君には舞台に立って輝く才能もある。』 ……?どういう、 『勝手ながら見させてもらったんだ。文化祭の歌』 「!」 『花ヶ前はその才能を磨くことができる。カリキュラムについては、また資料を送らせてもらうよ。』 夢みたいな話だった。 しーくんに会いたいのもあったけど、花ヶ前は歌とかダンス、舞台芸術に力を入れてるって聞いていた。 断る理由はないだろう。 「ありがとうございます、僕、頑張ります…!」 『うん、それを聞けて嬉しいよ。入寮は4月だから、その時また会おうね。』 「はい…!」 『それと、学費はこちらで負担するから。あとは、ひろくん』 「はい?」 『前髪、伸ばしといてね』 「え、」 『ばいばーい』← 「あっ、ちょっ」 (ツー、ツー) き、切られた…。 前髪伸ばしてってどういう… 「尋衣〜?獅之助さん?」 「あ、うん。」 「あらぁ〜、なんだって?」 「なんか、花ヶ前に外部特待生として入学してって」 「まぁ!後でメールしなきゃ〜」 こんな感じで、僕の進路は花ヶ前学園に決定した。
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!