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66:有志
深夜だったというのに、魚沼豊は、二つ返事でやってきた。
歩哨に誘導され、基地内の指定された場所に行くと、辰平ともう一人、見慣れぬ男が待っていた。豊は、トラックを停めて運転席から降りた。
「よーう、辰平!」
豊は、快活に手を振った。
「豊、ごめんね。こんな遅い時間に」
「かまわねえよ。俺が作ってる米にネズミが入ってたなんて、俺自身許せねえからな。すぐに引き取って、新しいの置いてくよ」
豊は、トラックの荷台から台車と米の入った大きな麻袋、それに空の麻袋を地面に下ろした。
それから、航太郎を見て首をかしげ、こっそりと辰平に耳打ちした。
「なあ、おい、こいつ誰だ? 見たところ、えっらく階級の高い軍人さんじゃねえか。なんで、お前と一緒にいるんだよ?」
「まあ・・・その、いろいろと」
「天海航太郎です」
航太郎は、自ら名乗り出た。
「辰平とは、そう、有志と言いますか、同志です」
豊は、トンチンカンな顔付きになった。
「何言ってんのか、さっぱりだな」
「それはいいから、早く。豊、こっちだよ」
辰平にせかされて、豊は不思議そうな顔をしつつも、言われるがまま台車を押して進んだ。
米を食糧庫に運び込むと、豊は
「で、持ち帰る米はどれだ? 袋は、ネズ公が齧って穴開けちまったんだろ? こっちに移し替えるぞ」
と、空の麻袋を広げようとした。
「別の場所にあるんだ」
「別の場所? でも、食糧庫はここだけだろ? 俺、ここには何回も米を納品してるから知ってるぞ」
「いいから、早く! こっちへ!」
辰平が、切羽詰まった声で促した。
豊は、まだ何か言いたげだったが、黙って辰平たちのあとについていった。
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