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70:懺悔
コータローとシナコは、話が終わったあとも、空になったペットボトルを持ったまま、しばらく寄せては返す波を眺めていた。
「すみません」
しばしの沈黙ののち、コータローは出し抜けに謝った。
「え?」
「なんだか、あなたを懺悔の相手に選んでしまったみたいで・・・。すみません」
「謝ること、なにもないじゃない」
シナコは、横にいるコータローの背中を軽く撫でた。
コータローの体に、わずかに力が入った。が、それだけで、シナコのほうを見ることもしなかった。
「私が言いたかったのは、タッペイとユタカは、決して悪人ではないということです」
コータローは、肩を落としてこうべを垂れた。
「悪人どころか、罪人ですらない。あの二人は、むしろ被害者です。ことの首謀者は、この私だ。二人は、私の無謀な頼みに協力してくれただけなんです」
シナコは、コータローの横顔を見た。それから、砂浜におろしていたサンダル履きの足を持ち上げ、ぷらぷらと小さく上下に揺らした。
それに飽きると、流木から腰を浮かして立ち上がった。歩いてパラソルの外に出る。
「あなたもなんじゃない?」
「え?」
シナコは、笑顔で振り返った。
「あなたも、悪人とは呼べないでしょう?」
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