70:懺悔

1/1

12人が本棚に入れています
本棚に追加
/106ページ

70:懺悔

 コータローとシナコは、話が終わったあとも、空になったペットボトルを持ったまま、しばらく寄せては返す波を眺めていた。 「すみません」  しばしの沈黙ののち、コータローは出し抜けに謝った。 「え?」 「なんだか、あなたを懺悔の相手に選んでしまったみたいで・・・。すみません」 「謝ること、なにもないじゃない」  シナコは、横にいるコータローの背中を軽く撫でた。  コータローの体に、わずかに力が入った。が、それだけで、シナコのほうを見ることもしなかった。 「私が言いたかったのは、タッペイとユタカは、決して悪人ではないということです」  コータローは、肩を落としてこうべを垂れた。 「悪人どころか、罪人ですらない。あの二人は、むしろ被害者です。ことの首謀者は、この私だ。二人は、私の無謀な頼みに協力してくれただけなんです」  シナコは、コータローの横顔を見た。それから、砂浜におろしていたサンダル履きの足を持ち上げ、ぷらぷらと小さく上下に揺らした。  それに飽きると、流木から腰を浮かして立ち上がった。歩いてパラソルの外に出る。 「あなたもなんじゃない?」 「え?」  シナコは、笑顔で振り返った。 「あなたも、悪人とは呼べないでしょう?」
/106ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加