71:海で遊んでいこうよ

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71:海で遊んでいこうよ

 ほんの二、三秒、時が止まった感覚があった。  次には、コータローは、黒のポロシャツとベージュのクロップドパンツから、薄いグレーのパーカー、それにオレンジ色のサーフパンツに着替えていた。足元だけは、変わらずビーチサンダルだった。  驚きで声も出ないコータローに 「おーい!」 と、シナコが呼びかけた。  見ると、シナコの服装も変わっていた。白の半袖シャツにデニムのサロペットという格好だったのに、今は、エメラルドグリーンのビーチドレスを身にまとっている。生地が多少透ける素材で、中にはイエローのビキニを着ているのが確認できた。  狐につままれたようなコータローに向かって、シナコは大きく手を振った。 「せっかくここに来たんだから、海で遊んでいこうよ! 浮き輪もあるよ~」  シナコの両手に一つずつ、浮き輪が現れた。どちらも虹の色が同心円状に配色されたデザインだった。  コータローは、数回目を瞬いた。  それから、サングラスをしたまま、顔を右手で覆った。  次に顔をあげた時には、コータローは笑っていた。サングラスを外し流木の上に置くと 「仕方ありませんね。少し乗っかりましょうか」 と、誰に言うともなくつぶやいて、立ち上がった。
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