72:水鉄砲で攻撃

1/1
12人が本棚に入れています
本棚に追加
/106ページ

72:水鉄砲で攻撃

 日没の直前。  シナコは、波打ち際で、無色透明なプラスチックでできた水鉄砲を小脇に抱えて、コータローをおいかけ回していた。  コータローは、丸腰だった。 「シ、シナコさん、ずるいですよ!」  シナコの攻撃から逃げながら、コータローは文句を言った。 「自分だけ武器を持つなんて!」 「え~、ずるくなーい」  シナコは、一瞬だけ立ち止まった。それだけで、水鉄砲の水が自動的に補給された。 「だって、ジャンケンに負けたのコータローだもん。だから、これでいいの!」  シナコは、コータローに容赦なく水を浴びせかけた。今度は横腹に命中し、コータローはくすぐったくて飛び上がった。 「む、酷い・・・。ならば」  コータローは、シナコに背を向けて逃げるのをやめた。正面を向け、シナコと向かい合う。 「ん? どうしたの?」 「好き勝手するのもここまでです。その武器、頂戴しますよ!」  コータローは、シナコから水鉄砲を取り上げようとした。 「あ! ずるい、負けたくせに!」 「勝てば官軍です」  しばらく揉み合っていたが、ふいにコータローは、足で異物を踏んづけてバランスを崩した。  あっと思った次の瞬間には、背中から砂浜に倒れていた。倒れる時、後頭部を何かにぶつけた。 「がっ! 痛・・・」  コータローの足元を、ヤドカリがのんびり通り過ぎて行った。  シナコは、水鉄砲を放り投げると、慌ててコータローの元に駆け寄った。 「コータロー! だ、大丈夫?」 「ええ・・・泣き面に蜂とはこのことですが、たいしたことありません・・・」  コータローは、後頭部を手で押さえた。その瞬間、波が寄せてきてコータローの呼吸を妨げた。 「ぐふ・・・」  波が引いた時、コータローの顔のすぐそばに、シナコのデコルテがあった。
/106ページ

最初のコメントを投稿しよう!