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72:水鉄砲で攻撃
日没の直前。
シナコは、波打ち際で、無色透明なプラスチックでできた水鉄砲を小脇に抱えて、コータローをおいかけ回していた。
コータローは、丸腰だった。
「シ、シナコさん、ずるいですよ!」
シナコの攻撃から逃げながら、コータローは文句を言った。
「自分だけ武器を持つなんて!」
「え~、ずるくなーい」
シナコは、一瞬だけ立ち止まった。それだけで、水鉄砲の水が自動的に補給された。
「だって、ジャンケンに負けたのコータローだもん。だから、これでいいの!」
シナコは、コータローに容赦なく水を浴びせかけた。今度は横腹に命中し、コータローはくすぐったくて飛び上がった。
「む、酷い・・・。ならば」
コータローは、シナコに背を向けて逃げるのをやめた。正面を向け、シナコと向かい合う。
「ん? どうしたの?」
「好き勝手するのもここまでです。その武器、頂戴しますよ!」
コータローは、シナコから水鉄砲を取り上げようとした。
「あ! ずるい、負けたくせに!」
「勝てば官軍です」
しばらく揉み合っていたが、ふいにコータローは、足で異物を踏んづけてバランスを崩した。
あっと思った次の瞬間には、背中から砂浜に倒れていた。倒れる時、後頭部を何かにぶつけた。
「がっ! 痛・・・」
コータローの足元を、ヤドカリがのんびり通り過ぎて行った。
シナコは、水鉄砲を放り投げると、慌ててコータローの元に駆け寄った。
「コータロー! だ、大丈夫?」
「ええ・・・泣き面に蜂とはこのことですが、たいしたことありません・・・」
コータローは、後頭部を手で押さえた。その瞬間、波が寄せてきてコータローの呼吸を妨げた。
「ぐふ・・・」
波が引いた時、コータローの顔のすぐそばに、シナコのデコルテがあった。
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