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78:ユタカ、激白
「そんなこと、心配したってしょうがねえだろ?」
ユタカは、豪快にタッペイの肩を叩いた。
「信じて待つだけだ。俺は、絶対に日本に帰ってみせるぞ。なんたって、タメコの腹の中には、俺たちの愛の結晶が宿ってるんだからな!」
その場は、再度しんとした。
次には、
「えええええー!」
と爆発したような叫び声があがった。
「ほ、本当ですか?」
「嘘だろ、ユタカ? 僕も初耳だぞ!」
「あれ、そう? 言ってなかったっけ?」
当の本人だけが、のほほんとしていた。
「で、では、ユタカ、あなたの奥様は、あなたの子を身籠った状態で、一人日本にいるってことですか?」
「そういうこったな」
「なんで、もっと早く言ってくれなかったんだよ!」
タッペイは、ユタカに迫った。
「いやあ、言った気でいた。はははっ」
「『ははは』じゃないだろ! それ知ってたら、あの夜、絶対に声なんかかけなかったのに!」
「そうですよ」
コータローも身を乗り出した。
「断ることもできたじゃないですか? なんで話に乗ったんです?」
「なんでって、そりゃお前」
ユタカは、あっけらかんと言った。
「父親になる身として、我が子に恥じるような真似はできねえだろ? あの晩、あの子を見殺しにするって選択肢は、俺にはなかったんだよ」
タッペイもコータローも、しばらくなにも言わなかった。
「・・・馬鹿じゃないのか、お前」
ようやく、タッペイが言葉を発した。
「僕は、タメコさんに二度と顔向けできないよ・・・」
「俺、お前にタメコ、会わせたことあったっけ?」
「まだないけどさ・・・」
「あなた方は、その、幼馴染とかではないんですか?」
コータローが、二人を交互に見て尋ねた。
「いや、違う。僕とユタカが知り合ったのは、僕が徴集されてから。ユタカが基地に米を納品しに来て、それで話をするようになったんだ」
「そうだったんですか。随分仲が良さそうなので、私はてっきり」
「BLじゃねえぞ」
先回りして釘を刺すユタカに、コータローは
「それは、よくよく分かりました。いや、そうじゃなくて・・・もっと昔からの付き合いなのかと思っていました」
と言った。
それから、視線を下に向け、くすりと笑った。
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