80:雪の日

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80:雪の日

 三人が島に流れ着いてから、半年以上が経過した。  朝食の準備があるので、タッペイは、シシマ邸で一番早く起きる。その日も、誰よりも早く目覚め、いつも通り自室のカーテンを開けた。  東側の部屋なので、普段なら、太陽の光がまっすぐに入り込んでくる。  だが、その日は違った。  いつもと違う外の風景に、タッペイはしばし言葉もなく立ち尽くした。  雪が降っていた。夜中から降っていたのだろう。地面も、低木に茂る葉も、すべてが白く雪に覆われている。  いつだか、シシマが言っていたことを思い出した。 『一年に一日だけ、冬になるんだ。その日は雪も降るぞ』  今日がその日か。  タッペイは、しばらく雪を眺めていたが、朝食の準備をしなければならないことを思い出し、身支度をして部屋を出た。  外は冬景色だが、家の中の気温はいつもと変わりなかった。息も白くならないし、夏の服装をしていても寒さは感じない。  タッペイは、朝食の準備をしながらも、ついつい、キッチンとつながっているダイニングの大窓の向こう、白銀世界に見入ってしまった。  食卓が整う頃、二階からドタドタというシシマの足音が聞こえた。  シシマの服装を見て、タッペイは呆気に取られた。  耳当てに、フード付きの黒いダウンコート、モスグリーンの畔編みのセーター、ジーンズ、足元はショート丈のモカシンブーツを履いている。 「タッペイ、おはよう!」  シシマは、いつもと何ら変わりなく挨拶をした。
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