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空色には届かない
なんて綺麗なんだ。
初めてその子を見た時、そう思った。
あとから思えば、このときすでに一目惚れというやつをしていたのかもしれない。
白に近い卯の花色の髪と髪より白い肌。
身長は俺より少し低いくらいだから百七十五センチくらいで、でも俺よりも華奢だった。
顔の造形は、神が創った特別製だと思えるくらいに整っていて、周りからイケメンだとからかわれる俺よりも確実にイケメンだろう。
いや、イケメンという言葉では追いつかない。
美人、いや美少年だろうか。
そんな言葉の方が似合う気がする。
ただ、濃紺の瞳には生気がなかった。
その子の境遇を考えるとそれも仕方がないのだろう。
シャンデリアや天蓋つきのベッドに囲まれていても、いやそんなものに囲まれているからなのかもしれない。
「私たちは、貴方を保護しに来ました」
隣の先輩の言葉で、自分の職務を思い出した。
その少年は、まるで俺たちの存在に今、気づいたとでも言う風にこちらを向いた。
正面から見ると、その少年の美しさがますます際立つ。
先輩のいる場で俺は喋る必要はないから、今の状況だとただ立っているだけになる。
先輩が、また少年に言った。
「君を監禁していた人たちは私たちが逮捕しました。貴方の身も一時的に私たちが預かります。なので、一緒に来てください」
先輩らしい簡潔な言葉。
これがイラつく人もいるようだけど、俺はこれはこれでいいんじゃないかと思っている。
少年は何も言わずにゆっくりと立った。
と、ふと気配を感じた。
とっさに振り返ってクローゼットを銃で撃つ。
「ヒィッ!」
と男の声が聞こえた。
俺が銃を使ったことに驚いていた先輩と顔を見合わせて、クローゼットを開けるとそこには拳銃を構えた男がいた。
俺は男から拳銃を奪い手錠をかける。
まだ残りはいたらしい。
でも、この男が撃とうとしていたのは俺と先輩か、この少年のどちらなのだろうと思った。
こんな場面を見たにも関わらず、少年が相変わらず無表情だったことが気になった。
いや、そんなことを気にしても仕方ないだろう。
あの少年はこの後、成人するまで施設にでも預けられて普通に暮らすのだろうから。
いや、普通に暮らせるのだろうか。
少し心配にはなったものの、俺は先輩とその少年を無事に保護することができた。
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