空色には届かない

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ウサギを半強制的に風呂に入れた時、俺は水無月からもらった書類を読んでいた。 本当は、ウサギが寝てからの方がバレずに済むのだとわかってはいるものの、なるべく早く読みたかったから仕方がない。 鞄から、書類を取り出す。 名前は、ウヅキ。 だが、本名なのかはわからないらしい。 年齢はわからないが、推定十七歳。 俺と三歳しか年が違わないということだとは驚きだ。 あの大人っぽさも年相応のものか、もしくは……。 その他は不明、不明、不明。 体重は平均より少し低く、身長はだいたい平均。 わかったのは年齢くらいだろうか。 「……はぁ」 溜め息をつく。 好きな食べ物でも書いてくれないものか。 いや、そんなもの書くのは課長くらいだろう。 と、部屋のドアがトン、トン、と叩かれた。 この家にいるのは、俺以外にウサギだけ。 「入っていいぞ」 俺がそう声をかけると、ドアが開いてウサギが部屋に入ってきた。 裸で。 そういえば、着替えを渡すのを忘れていた……! 「……服」 ウサギがそう言ったのを背中で聞きながら、俺は買っておいた服をウサギに渡した。 ウサギを風呂に入れる前に用意しておいた部屋にウサギが入ったことを確認して、また溜め息をつく。 着替え終わって灰色のスウェットを着たウサギが、俺が溜め息をついた姿を見ていたことに俺は気がつかなかった。 「ねぇ、さっきの飲みたい」 ウサギが言った。 着替え終わったらしく、無地でシンプルな灰色のスウェットを着ている。 さっきの、とは炭酸のことだろう。 「気に入ったのか?」 俺がそう聞くと、ウサギがうなずいた。 スウェットがぶかぶかなのもあってか、それとも名前のせいなのか、どこか小動物みたいだと思った。 俺は長い廊下を歩いてまたキッチンへ向かう。 炭酸をまたグラスに注いでウサギに渡す。 「……美味しい」 炭酸を飲んで、ぷはーと言ってからウサギがそう言った。 「それはよかった」 「……ぷはー」 ウサギはもう一度、炭酸を口に含んでいる。 無表情だったウサギが、にこにこ笑っている。 いや、少し口角が上がっているというくらいの変化だが、俺はなぜか嬉しかった。 明日はたくさん炭酸飲料を買ってこよう。 近くのコンビニ、いやスーパーの方がたくさんあるだろうか、ロクハラの自動販売機には珍しい飲み物がたくさんあると聞いたからそっちを見てもいいかもしれない。 真剣にそんなことを考える俺がおかしくて、少し笑う。 ウサギがそれを見て不思議そうな顔をしていたのがおかしくて、さらに笑った。
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