千影と涼夜

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 4月7日。  珱楠(おうなん)学園高等学校入学式および始業式当日の、朝7時57分。  遅刻まであと、23分。  水城千影は、涼夜の部屋の前にいた。少なくとも10分ほど前から何度もインターホンを鳴らしているが、待ち人はいっこうに出ない。 「これは……」  寝てる。絶対寝ている。  完全に遅刻である。いや、そもそもそんなに余裕をもって家を出た訳では無いし、着いた時も結構ギリギリだったし、だから決して涼夜が悪いのではなくて……あ、8時。  初日から遅刻。  これでもう、先に行くという選択肢はなくなった。一人で怒られるなんて無理。ヤだ。そんな目立つことしたくない。  ……なんて、言い訳してみる。涼夜はきっと疑わない。 「よし。……涼夜?入るよー?」  気の抜けた気合いの言葉と共に、そっとドアを開く。スペアキーを貰っていることに少しの優越感。自然とニマニマしてしまう。
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