千影と涼夜

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 案の定、部屋の中は静まり返っていた。玄関を抜けて真っ直ぐ進み、右手のドアを開く。すると、ちょうど目が覚めたのか、顔だけ上げた状態の涼夜と目が合った。 「……チカ?おはよ。」  ふわっと微笑う。  なにこれかわいい。じゃなくて。 「おはよう……」  挨拶を返すと、また、ふわり。  常の無表情とのギャップに頬に熱が集まる。……だからそうでもなくて! 「涼夜!遅刻!準備して!」  そう。これを言うのが目的であって、決して涼夜の寝起きの顔を見に来た訳では無い。  涼夜は、朝に弱い。以前、昼休み頃になって登校してきたことがあって、理由を尋ねたところ、寝てた。と、たいそう不機嫌な顔で一言。先生に電話で叩き起されたらしい。  つまり、放っておくと午前中いっぱいは起きられないのだが、 「チカが起こしに来てくれたら起きれる」 と甘えた感じで言われてしまったら、もう、ねえ? 僕がやらないはずがない。
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