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ぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎしぎ
突然、轟音が部屋中に響き渡る。
轟音が部屋を揺らし、頭を揺らす。耳をふさいでいても全く意味がない。あまりの揺れに平衡感覚を失う。里山は頭を抱えて床に倒れ伏した。
音が、怒りが、憎しみが、諦観が、ガンガンと部屋を揺らす。鼓膜と頭が裂けてしまいそうなほどだ。
里山は何もできず、ただうずくまるしかない。
「やめてくれ、やめてくれ、やめてくれ……!」
しかし、音はいまだ鳴り響く。
音がぴたりとやんだ。あれほどの轟音が嘘のように今は静まり返っている。あたりには先ほどの揺れで散乱した本や食器が散らばる。
「とまったのか……?」
里山は壁に耳を当て、息を殺す。じっと耳を澄ます。
しかし、なにも聞こえない。
「ああ、よかった。」
里山がほっと胸をなでおろしたそのとき、
ぺた ぺた ぺた ぺた
静かに、しかしはっきりとその音は聞こえてきた。なんだ、なんなんだこの音は!
里山はふと天崎の言っていたことを思い出す。
--死体の首はつま先が床に着きそうなくらいに伸びきってたらしい。
そうだ。死体の首は床に着きそうなほどに伸びていた。じゃあ、時間が経って、伸びて伸びて伸びて伸びて伸びて伸び切ったとしたらどうなる。
足が床についたのか?
だとしたらこの音は歩いている音か?歩いて、どこに向かう?
決まっている。女は恨んでいるのだ。
社会を、犯人を、警察を、そして、無関心な隣人を恨んでいる。
里山は恐ろしくて布団に全身を隠してうずくまった。がたがたと手足が震える。耳を力強くふさいでいるはずなのにその音だけが頭の中でこだまする。
ぺた ぺた ぺた ぺた ぺた ぺた
「もう、やめてくれ!」
音は次第に近づいてきているようだった。ゆっくりと、確実に。
そして、その音が里山の部屋の扉の前で止まると、
こん こん
扉をノックする音。里山は布団の中で息を殺す。
こん こん こん こん
扉をノックする音。里山の呼吸が荒くなる。
こん こん こん こん こん こん
扉をノックする音。心臓がばくばくと脈打って痛い。
どん!どん!どん!どん!どん!どん!
扉が乱暴に叩かれる。おんぼろなドアは今にも壊れてしまうそうなほどだった。
里山はただ耐える。これは夢だ。悪夢を見ているだけなのだと自分に言い聞かせて。
目を閉じて、ただ待つ。
どれほどの時間、そうしていただろうか。里山はいつの間にかノックの音が止んでいることに気づいた。耳を澄ませてみても何も聞こえない。
「ああ、助かった……」
里山は布団から這い出て、ほっと胸をなでおろす。時計を確認してみると時刻は午前四時。外はまだ暗いが明け方と言ってもよい時間だろう。
朝になったらこの家を出ていこう。もう、こんなことはこりごりだ。まずはあの大家に文句を言ってやらねば気が済まない。
里山は念のために外の様子を確認しておこうと思い、玄関へ向かう。やはり音は聞こえてこない。
里山はのぞき窓に目を近づける。
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