ぎし

「あ」
　すると、そこには女が立っていた。いや、正確に言えば女かどうかは判別がつかなかった。その「何か」の首は伸び切っていて、顔が見えなかったからだ。
　そして—

　里山の死体が発見されたのはそれから一週間後のことだった。大学に来ないことを不審に思った友人が部屋を訪れたのだ。
　里山は首を吊って死んでいた。
　その首はつま先が床につきそうなくらいに伸び切っていたそうだ。
　テーブルの上には遺書のようなものが残されていた。友人の話によればその筆跡は里山本人のものではないらしい。
　そこには短く、こう書かれていた。

「許さない」と。