第三章 町?街?え?

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第三章 町?街?え?

 食事を終えて、ディアナに戻った。そのまま、リーゼは居住スペースに入って横になった。すぐに、居住スペースからかわいい寝息が聞こえ始める。  食事をして少しは落ち着いたのだろう。ゴブリンに襲われて怖い思いもしたのだろう。ゆっくり寝かす事にした。  そっとカーテンを閉めて(外からでは壁を引き出す事はできない)、ナビの画面を見つめる。  時折、赤い点が光るだけのナビを眺めている。  ディアナが通った場所は道として表示されているが、それだけの寂しい地図だ。 「エミリア。あとどのくらいだ?」 『時間計測・・・成功。あと、11時間32分後に到着予定。ただし、途中馬車などと遭遇した場合、現在の速度が維持できなくなる事が予測されます。その場合、到着時間が遅れます』 「わかった。音楽を鳴らす事は可能か?」 『音楽プレイヤーを起動・・・失敗』 「なんで失敗した?」 『音楽プレイヤーの機能が組み込まれていません』 「どうしたらいい?」 『魔物の討伐が必要です』 「どのくらいの魔物討の討伐が必要になる?」 『討伐履歴を参照・・・成功。続いて、音楽プレイヤーを検索・・・成功。ゴブリン換算で、約1万2千匹の討伐が必要です』 「1万2千匹?ゴブリン以外ではどうなる?」 『魔物を検索・・・失敗。サンプルが無いために、計算できません』  そりゃぁそうだよな。  ゴブリン以外倒していないのだからな。そもそも、街道沿いに出てくる可能性がある魔物以外は倒せないよな?  俺が武器を持って戦う?  現実的じゃないよな? 「どうしたら、討伐を増やせる?」 『討伐方法を検索・・・成功。ディアナで轢き殺すのが1番確実です。それ以外ですと、マスターが御自ら倒す事です』 「それができないから悩んでいるのだけどな」 『マスターと契約した奴隷や従業員が倒しても、討伐に記憶されます。ちなみに、マスターのステータスは、知力を除きますがレールテの平均値を大きく上回っています。英雄と呼ばれる冒険者にもなれます。武器を持って倒す事も不可能ではありません』 「平均値?」 『およそ、D-Eです。Cあれば上位者です。B以上は限られた人がたどり着くステータスです。ちなみに、Hは最低です』  ”ちなみに”は必要ないよな?  そうか・・・ん?そうなると、隠蔽した方が目立たないよな? 「エミリア。ステータスだけど、俺のステータスでは目立たないか?」 『目立つ事が考えられます』 「隠蔽はできるか?」 『ステータス隠蔽を検索・・・成功。一部隠蔽は可能です。知力は最低のHですので隠蔽ができません』  知性Hがそんなに不思議か?  隠蔽できる事がわかった。上の物を下に見せる事はできるのだな。 「わかった、知力以外を、3段階下げてくれ」 『かしこまりました。AをDに、CをEに偽装します。知力のHは偽装できません』 --- ステータス ステータス  体力D  腕力E  精神力D  知力H  魔力D  魅力D  ディアナの運転席で、船を漕いでいると突然アラームが鳴り響いた。 『マスター。マスター』 「どうした?」 『はい。前方15分くらいの距離に、馬車と人の気配があります。どうされますか?』  流石に跳ね飛ばすとは言えないし、ディアナでは目立ってしまうだろうな。 「馬車が居るのか?違う道を探したほうがいいかもしれないな?」 「ヤス。アーティファクトで間違いないよね?これ?」  後ろから声が聞こえてきた。 『後ろで寝ていた雌が起きたようです』  報告されなくても流石にわかる。  カーテンを開けて、リーゼがこっちを見ている。 「そうだけど?」 「それなら、このまま進んでも大丈夫だと思うよ。なにか言われたら、僕が話をするよ」 「へぇリーゼにはそこまでの権力があるのか?」 「ん?違うよ。僕は、ユーラットにある宿屋に居る。美人の店員さんだよ?」 「自分で美人とかいう奴の言葉は信用できないな・・・。まぁ可愛いのは認めるけどな。美人ではないな」 「ヤス・・・。僕の事・・・。可愛いって・・・。違う!大丈夫だよ。それに、門番とか商隊の護衛は、宿屋の常連が多いから顔なじみが多いよ」 「そうか、そういう事ならこのまま進むか・・・。速度を落とせば大丈夫だよな?」 「うん!」  速度を15キロ程度まで落とした。  揺れが少しおさまった。やはり道が悪いなって日本と比べるのがダメなのだろうな。  リーゼに任せるとして、なにか問題が有ってもディアナの中に居れば安全だろう・・・。だといいな? 「本当に早いのね?」 「そういっただろう?」 「うん。もうこの辺りなら僕が道案内できるよ?」 「ほぉ?近道とかも?」 「近道?ないない。普通に、この道をまっすぐ進めば、いいだけだからね」 「おい。それは道案内と言わないと思うぞ?」 「そう?」  後ろから身を乗り出して、外の風景を見ながら、リーゼは面白くもない事を言い出している。 「でも・・・」 「どうした?」 「このアーティファクト・・・。誰かに盗まれないかな?宿の近くに置いて置けるかな?大丈夫かな?」 「どうだ?エミリア?」 『マスター認識でロックされます。マスターが許可しない者は、ドアを開ける事ができません。また、破壊の意図を感じたら攻撃する事もできます』 「なんだって?」 「あぁそうか、リーゼにはエミリアの言葉がわからないのだったな」 「・・うん(ヤスにわかるほうが不思議なのよ!)」 「そうだな。リーゼは大丈夫だとしても、それ以外の者が扉を開けようとしても開かないようにできる。壊そうとしたら、ゴブリンを跳ね飛ばしたように攻撃する事もできるし、逃げる事もできる馬車だってことだよ」 「へぇすごいのね」 『マスター。雌に、マスターの凄さを解らせましょう』 「エミリア。いい。面倒だよ。それよりも、マルスはまだ作業をしているのか?」 『はい。マスター。マルスは、拠点を作っております』 「そうか、わかった。拠点にも行かないと駄目か・・・。説明を聞かなければならないだろう?」 『お願いいたします』 「わかった、マルスが拠点作成を終えたら教えてくれ」 『了』 「ヤス。帰るの?」 「そうだな。拠点には帰るつもりだけど、まずはリーゼをここまで運んだ”駄賃”をもらう約束になっているからな。仕事として考えれば当然だろう?」 「・・・。そうだね。うん」 「あぁおやっさんの料理は美味しいのだろう?」 「え?あっ!もちろんだよ!」 「楽しみにしているからな」 「うん!」  速度を落としたと言っても、馬車の1.5倍程度の速度は出ている。  まだ馬車とは遭遇していないが、ナビには確かに人族の反応が出始めている。  そう言えば、マークのオンオフとかできるのかな?  たしか、真一の説明では・・・おっできた。 『マスター。運転しながらの操作は危険です』 「あっすまない」 『いえ、エミリアにお命じください。操作を行います』 「次からは、お願いする」  フロントガラスに映る可愛い顔したリーゼが”むぅ”という表情をしている。  自分が無視されたのが気に入らないのだろう。”お子ちゃま”はだから嫌いだ。 「リーゼ。宿屋までは、このサイズの馬車が入っていけるのか?」 「え?あっ・・・。大丈夫・・・じゃないかな?」  なんか、曖昧な表現だな。 「なんだよ、曖昧だな」 「だって、この”エミリア”だったよね?僕、大きさわからないわよ」 『雌に告げてください、ディアナのサイズは、通常の馬車の4台分です』 「ディアナな。それで、大きさだけど、幅は倍で長さも約倍くらいだぞ?」 「うーん。それだと難しいかな?」 『マスター。ディアナを、街の外に停車してください』 「リーゼ。ディアナは、街の外に停めておくことにするから大丈夫だ」 「へ?わかった」  馬車がちらほら見え始めたが、ディアナを見て動揺はしているみたいだが、突っかかってきたり、文句を言ってきたりする者は居ない。  少し遠巻きにして見ている位だ。  速度差もあるので、気にしてはいられないのだろう。  などと思っていたが、ユーラットの街?が見えてきたら状況が一変した。
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