兄さんは女装をやめられない

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ところで、私には、舞子(まいこ)という親友がいるの。 小学校からいつも一緒に行動している大の仲よしで、今の高校も同じなんだけど、最近、付き合いが減ってきたの。 私がヒロインをやっていてその基地みたいになっている研究所にたまにお世話になっているというのもあるんだけど、それとは別に、舞子のほうも、私に声をかける回数が少なくなっていて、その原因というのが・・・。 私、見てしまったの。 あるとき、とある用で外出するために家を出たあと忘れ物に気付いて取りに戻ってきたんだけど、そのときお兄ちゃんの部屋から声がしたの。女の人の声が。お兄ちゃん、女性付き合いが全くないはずなんだけど、それで部屋の扉を開けてみたら、そこに舞子がいたの。舞子ったら、お兄ちゃんに服を着せていて、すごく楽しそうだったの。 それで私、何してるの、と文句を言ったの。それに対し、舞子、とりあえず事情を説明してくれたけど。この子、服を着せたり作ったりするのがすごく得意で、私も何度か色んな服を作ってもらったことがあるんだけど・・・。「ごめんなさい、隠すつもりはなかったの。だけど、私、女性の服を考えるだけでなく、もっと変わったことをやってみたかったの、そしたら、お兄さんが女装してるって知って、それで着る服を相談したりしてたら、はまってしまったの。だけどあなた、女装に反対してるっていうから、あなたが家にいないのを見計らって、時々服を持ってきてあげたりしてたの。だけど今日すぐ戻ってきたのは予想外だったわ」 そりゃあ確かに、舞子はよく私の家に遊びにくるから、お兄ちゃんとも知り合いにはなるけど。それでも私が納得しないのに対し、こう言ったの。 「あ、誤解しないでね。そんな深い関係じゃないから。私もそこまでいかないように気を付けてるつもりだし」 「私からも注意するように文句言っといてあげる」「はいはいご勝手に」 さすがにお兄ちゃんの女装の手伝いはやめさせられそうもなくて、けんか別れもしたくないのでこれ以上文句は言わなかったけど。 だけど別の日に話してたとき、私がミクロ化ヒロインをやってることをそれとなく言ってきたの。 「何で舞子が知ってるのよ」「お兄さんから聞いたのよ」「もう、お兄ちゃんたら、秘密にする約束だったはずよ」「まあいいじゃないの、輝子。私もできるだけ協力するわ」 そりゃ、舞子には昔から色々助けてもらってたから、助かるといえばそうなんだけど。 「というか、舞子がお兄ちゃんに女装をそそのかしたんじゃないの?」「違うわよ、私が女装の手伝いを始めたのは最近よ」「じゃあ、何で怪物を取り除いたのにお兄ちゃんは女装をやめないの?お兄ちゃんが女装に興味がなくなったけどあなたが説得して続けさせたんでしょ」「そこまでしないわよ。というか、お兄さんに心の変化は見られなかったわよ、私の見たところでは。本当よ、信じて」 さすがにうそとも思えなかったので、更に追求する気にはなれなかった。 「ところで、輝子がやってるヒロイン、名前あるの?」「うーん、ないわね、そういえば」「そうなの。実は私、名前考えてきてるの」「え、どんな?」「『ミクロスガール』っていうの。どうかしら」「うーん、悪くはないわね」 そのときの私はとりあえず納得はしていた。だけど・・・。とりあえず質問してみた。 「それで、それどういう意味なの?」「小さいという意味のミクロと、クロスドレッサーのクロスを合わせてミクロス」「え、何、クロス何て?」「クロスドレッサー。女装を英語でこういうの」「え?」「だって、あなたがヒロインをやるきっかけがお兄さんの女装だったわけでしょ。だから、合わせて『ミクロスガール』」 「いやよ、そんな変な名前」 ―――終わり―――
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