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こみあげてくるなにかで花火が滲んだ。
故郷を離れずいぶん経つ。祖父母との別れを経験した。父も母も元気だが会うたびに老いを感じる。
夏の終わりの花火がここまで心に染みるとは知らなかった。
「あれ、先輩?」
聞き覚えのある声に振り替える。
トートバックを肩に提げた後輩がベビーカステラを頬張りながら近づいてくる。
「ひとりで花火ですか」
職場の後輩はそんなことを言って、私の感傷など気づきもしない。こんなときは相手の無頓着さがありがたかった。
「もう帰るよ」
「そうですか」
そばに来るとベビーカステラの甘い香りがした。
「一緒に花火を見たかったんですけどね」
思いもよらない言葉にとっさに返事が出来なかった。
打ち上げられた花火が夜空いっぱいに広がった。
となりにやって来た後輩の横顔が赤く照らされる。
砂金を振り撒いたように煌めく火花が湖面に映り込み揺れているのを、私たちは一緒に眺めていた。
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