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むわっとした熱気が夜の公園に充満していた。
腹の底を揺らす轟音が響く。遊歩道に囲まれた池の水面に赤い大きな花が咲いた。夜空に広がる火花が金色に変化する。繊細な金細工のように細い尾を描きながら降っていく。
花火の名残がちかちかと輝いて夜のなかに溶けていった。
たてつづけに打ち上げられる色とりどりの花火が、見上げている浴衣姿の人々をさまざまな色彩で照らし出している。
空に大輪が花開くと感嘆の声がさざめいた。
私はひとりで眺めていた。
仕事帰りで自転車を押しながら通勤路の公園を通りすがったにすぎない。
ピンク色の浴衣を来た小さな女の子と父親が手を繋いで空を見上げていた。
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