異種族の亜人達は都会に驚愕する(中)

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異種族の亜人達は都会に驚愕する(中)

「会長、この人達が今度入団する事になった方達ですか?」 「そうだ。日本語が話せないから通訳は私が担当する事になる」 「それにしても凄く似合ってますねぇ。コスプレを知らない国出身でファンタジー衣装に見劣りしないとか、なりきり度半端無いっすね!」 「皆にはまだ秘密にしておく様に。大々的に報道する為には準備が要るからな。下手にすっぱ抜かれる訳にはいかない」 「了解です! それでジムのバスで何処に連れて行くんですか?」 「夏の合宿で使っていたコテージが有っただろう。彼処を一先ずの拠点にするつもりだ。物資の受け渡しはお前を間に挟む様にして、なるべく知る人間を少なくしようと思う」 「大型新人デビューの時みたいですね!」 「忙しくなるぞ。スパーリングパートナー候補にはメールを送っておいた。返事があり次第、お前に迎えに行かせるからな」 「ハイっす!」 元気よく敬礼しつつ、運転席に座ってエンジンをかける彼女を背にして異種族の亜人達に声をかける。 「さて、お前達はこれから素早く移動する為の乗り物に乗って貰う。其れがあのバスと言う道具だ」 『アーティファクトなのか?』 「その認識で構わん」 『使い魔を召喚した様な物か。我等を何処へ連れて行く気だ?』 「暫くは人目が付かない場所で過ごして貰う。時期が来たら本拠地を移して活動して貰う予定だ」 『了解した。アレに乗れば良いのだな?』 「席は沢山あるから好きな所を選べ。人数分の飯と飲み物を用意してある。乗り込んだ後で配給するからな」 『そう言えばまだ何も口にしていなかったな。早速馳走になろう』 全員がバスに乗り込み、お弁当を配り終えてから出発する。車内の明るさや振動の少なさに驚く者も居れば、握り飯の美味さに舌を巻く者、水筒の構造に興味を示す者と様々だった。 そして山を降りて高速道路に入り、遠くの街のイルミネーションを見て驚愕する。 『何故夜なのに向こうはあんなに明るいのだ?』 「電気と言う、この車内でも使われている明かりを灯す原動力だ」 『魔力を絶えず使い続けているのか?』 「それに近いな。但し、殆どが自動で動いている。構造については説明出来んが、火を使わずとも明かりを確保した為、夜でも積極的に活動出来る様になったんだ」 『人間族はいつ寝ているのだ?』 「人それぞれだ。今現在寝ている者も居れば、朝日が昇ってから眠る者も居る」 『不規則なのだな。体調を崩したりしないのか?』 「崩しやすいが、医療が発達しているから直ぐ元気になれる。よっぽどの事がない限り死に難くなっているな」 『外敵は?』 「病気や汚染物質位だな。本格的に敵対する者はこの国には居ない」 『狩をしないのか?』 「穀物を育てて、肉になる動物を家畜として飼い、保存出来る術が有るから食料に関して困る事は無い」 コテージに着いてからも質問責めにあったが、明日起きてから再びバスに乗って移動するので、その時にしてくれと逃れた。各部屋に案内して数人一組で部屋を別ける。 興奮して寝付けないかと心配したが、ベッドの柔らかさに驚いてからは明かりが付いたままなのに寝息が聞こえて来た。やれやれ、明日都会に連れて行ったら更なる質問責めに合いそうだな。
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