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異種族の亜人達が復活した(上)
20××年、少子化の影響なのか、テレビの視聴率の低下が原因かは定かでは無いが、日本女子プロレスは令和の時代を生き残れなかった。
願掛けのつもりで伸ばし続けた髪をリングの上に落として、私はジムの全員に向かい頭を下げていた。現役時代では下げた事など殆ど無かったのに、今は下げてばかりだな。
「すまない皆んな、私の力が至らなかった・・・」
漢に負けない強さを求めて始めた女子プロレスは私の人生を大きく変えた。そして私の夢は次世代へと永遠に受け継がれて行くものと信じていた。
「会長、頭を上げて下さい。私は会長が居たからこの世界に夢と希望を持って入って来れたんです! 着いて来た事に後悔なんて有りません」
「そうです。何時か又、女子プロレスが復活する日を楽しみにしています」
「それまでは私達は肉体労働で身体を鍛えて待ちますよ!」
「其れは良いトレーニングだな」
「ふふ、ありがとう。必ず日本女子プロレスを復活させてみせるさ!」
「その粋です会長! じゃあ私達はこれで失礼します」
「達者でな」
現役を引退後はこのジムの会長として日本女子プロレスを支えて来たが、奮闘空しくこの日を持ってプロレス界から女子プロレスの名を消してしまった。血湧き肉躍る乙女達の躍動は漢達に比べて見劣りするものではなかった。しかし、現実は酷な物だった。
「ああは言ったが、どうすれば良いのか考えても答えが出ていないのにな・・・」
皆が去り、誰も居なくなったジムを私自らの手で閉める。此処に戻って来るのは何時になるだろうか?
私は使い古された中古車に乗り、とある山に原点回帰と洒落込むつもりで足を運ぶ。何か良いアイディアが浮かぶ事を願いながら。
「懐かしいな、この洞窟もあの頃とちっとも変わっていない」
私は今、洞窟の中を歩いていた。此処は昔現役時代に武者修行として篭った山の中で見つけた場所だ。滝の裏側に有り、私以外の誰にも気付かれず其処に存在していた。
「あの時に使い古したサンドバッグか、懐かしいな・・・」
私はボロボロになったサンドバッグを軽く叩く。あの頃の記憶が蘇る様だ。
「ん? あんな所に何か有っただろうか?」
ふと洞窟の奥へと懐中電灯の光を当てると、当時の記憶には無い物が壁から突き出ているのを見つけた。不思議に思って近付いて触れてしまう。何かに突き動かされるかの様に。
ガゴン!
「何だ今のは!?」
殆ど力を入れたつもりは無かったのに、突起物は動いてしまう。そしてゴゴゴゴと振動と共に壁だと思っていた場所が横に動いたではないか。
「下へ続く階段だと?」
其れは隠し扉だったのか、私は突然階段が目の前に現れて困惑していた。だが、何故だかその先に行かなくてはと強く感じている。私は階段を降りて行った。
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