異種族の亜人達は都会に驚愕する(上)

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異種族の亜人達は都会に驚愕する(上)

『つまり我々を見世物として扱いたいと言う事か』 交渉を始めるにあたり、複数の亜人でごちゃごちゃ言われても仕方がないので代表者を二人に絞った所、好戦派代表が竜族、穏健派代表がドワーフとなった。 「端的に言ってそうなるな。衣食住は私が保障しよう。対価としてリングの上に上がって貰いたい。ファイトマネーは入場者数によって変動はするが、最低限は確保しよう」 『種族間同士の諍いに決闘の場を用意して鬱憤を晴らさせる事は有ったが、周りに見届ける大衆を配置し、人間族の娯楽を満たす為に利用する訳か』 「自らは戦う事で己の強さを誇示し、大衆は血湧き肉躍る闘いの勇姿を見て興奮の坩堝となる。どちらにとっても悪い話ではないと思うが?」 『大衆からは見物料を取り、我等はそれを糧として受け取るのか。しかしそれだと集う者達が少なければ採算が合わぬと思うのだが』 「お前達は自分達が選ばれた存在で有る事を忘れていないか? 美と秀でた才を持つ者に大衆は憧れを抱き、引き寄せられる事を」 『其処で我等がお眼鏡に叶う人間族の雄を見つけて、交配するも自由か。性転換の秘宝を使用せずとも種族の繁栄は叶いそうでは有るな』 「その後の自治権云々はさておき、子を作りたい時は申し出てくれ。ローテーションも組むが、全員が同時期に行われると支障が出るのでな」 『そう簡単に番を見つけられたら苦労はせん。少なくとも今すぐ欲しいとも思わん。起きたばかりで地上が今どんな様子か、そちらの方が気になるな』 「それなら手配は既にしている。その前に全員の意思を確認したい。今は私の求めに応じてくれるか否か?」 『反対する者などおらんよ。元々此処に残された我等が取るべき事は外敵に脅かされぬ安住の地の確保。そちらの方から提供されて死闘では無い闘いを対価とするなら、否と答えるものか』 「大衆に晒される事に忌避は無いか?」 『恥じた行いをする訳では無いのなら、他人の目など気にもならぬよ』 「それを聞いて安心した。最初は地上の事と大衆の多さに驚くだろうが、直ぐに慣れるだろう。問題は俗世に染まり、変な趣味にハマらない様注意してくれ」 『どういう事だ?』 「その内解る」 私は携帯にメールが届いたのを見て、場所を移す事にした。今からだと深夜になるから店に案内は出来ないが、高速道路からの夜景だけでも十分驚くに値するだろう。 合流地点には既にメールで伝えていた物が用意されていた。ペットボトル等は後で教えるとして、水筒や握り飯なら混乱は少ないと素朴なお弁当を作って貰った。そして運転手として一人オタクに理解のある者を呼び出した。
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