見えてきた、が

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見えてきた、が

 空が明るさを増してくると遠くに陸が見えた。  陸に着いたら身分証を見せにタワーポイントへ行ってチェックを受けなければならない。  今は便利な時代になった。世界共通のマイQRコードで個人の高度な管理が出来る時代になったのだから。  このように飛行機とは違う斬新な第2のルートで入国した場合、現地の国がQRで入国後も管理をしてくれるから、万が一遭難しても居場所をすぐ特定することが出来るのだという。 「いつの間にこんな進歩したんだ? 知らなかったよ、飛行ルートにこんな技術を持っていたなんて」  ザザザーーっと波は優しく打ち寄せては引き、また打ち寄せては引き。穏やかだった波は陸を目の前にして一気に引きが強くなった。 「おぉーーいッ! 引くな引くな! また海に逆戻りするだろうが」 陸が離れていく。 「そんなぁ……」  漂流してもう何回月を見ただろうか。荒波にもまれ、サメには追われ、タコには墨を吐かれて一時的にカプセルは真っ黒になり。  それを繰り返すカプセルは、毎度毎度海水で洗い流されいつのまにか視界が広がると、太陽がいつも坂上と対峙するように眺めている。  漂流ばかりで坂上はまだ一度も陸に上がっていない。休む間もなく〝出来事〟は沢山あるのだが、出発してからまだ何もしちゃいない。    
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