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テーコーツーリスト
「あいつクチコミ見なかったのかなぁ」
藤崎が同僚と坂上の連絡が遅いことを心配していた。
「でもクチコミ見てたらもう帰ってきても良さそうなもんだけど。1ヶ月半経ったよね」
この会社では、過去に他の社員ですらそこまで帰りが遅い人はいなかった。
〝ミステリーツアーは永遠に〟
カプセルの中でこの暗号を言えば、カプセルはその言葉に反応し、無条件でスタート地点に戻れるお助けシステムとなっている。
いわば安全安心、現地で何かトラブルでもあれば即座にカプセルが回収されるシステムとして、このツアーの一番の強みと太鼓判を押す。
それはホームページのクチコミのなかに客に交じって店長自らコメントして知らせていた。
〝ミステリーツアーは永遠に。この言葉をいうと元の場所に帰れるんだってさ! 覚えとこうぜ。by安永〟
ここでしか得られない情報となっているから一筋縄ではいかない店長の考える、これもミステリーの領域なのである。
「藤崎くん、僕がどうしてこんなミステリーツアーを作ったか話したことあったっけ?」
「いいえ?」
店長は新しいパンフレットの梱包をときながら藤崎に語りかけた。
「自分ではどうしようもない場面に出くわした時、そのとき君ならどう判断する?
周りに人がいて、便利なものがあって、それに頼って当たり前にある目の前の光景に甘んじるだろう?
人生の中で自ら窮地に立たされる経験のない人間は、諦めも早く、歳とともに急速に衰退していく。生きる気力が乏しくなり充実した生活基盤が失われやすい。特にこれからの人たちは便利なものがますます溢れてくるからその傾向はもっと強いだろうな。
我々は創意工夫する頭脳を使わずして生活し、それに気づかず実にもったいない人生を歩んでいるんだ。
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