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「わいは! どんだば!」
(わ、びっくりした)
浜辺にたどりついた坂上はカプセルから解放され大の字になっていた。ねそべってる坂上の顔を覗き込むようにして、割烹着を着たおばあさんが話しかけてくる。
「どんだんず?」(どうしたんだ?)
「おめぴんとへ」(しっかしりしろ)
ーー知らんっつうの。何語だよ、全く。
っていうかココどこ? だし。
オレは目的もなく流されてどこに着いたんだ?
あんな怖い思いまでして。
旅に出たのに行き着いた先がどこだかわからない。そもそも一体どこに向かって発射したんだろうか。
「したっきゃ。きつけへ」
(そしたら気をつけてね)
何の用だかわからないおばあさんに、坂上は寝そべったまま手を振ってバイバイした。
割烹着の胸には〝工藤〟と名前が書いてあった。
ーーやっぱり母国なのね。
「さ、とりあえずタワーポイントに行かなきゃ」
近くのタワーポイントを探してチェックを受けるとそこで帰りの交通費と食費が入った封筒を渡された。
ーーそうか。全部会社もちって言ってたもんな。
陸にあがった途端、坂上の腹が鳴った。
今まで何も食べずに何日も過ごしたなんて信じられないがそれが現実。
まだ海の上に浮かんでる感覚が抜けないけれど、地を歩くって力強いもんなんだなと坂上は地面を踏みつけ改めて感じた。
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