お見通し

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お見通し

「お疲れ様です、店長」  会議でほぼ1日留守していた店長が戻ってきた。坂上は店長に真っ先にお礼を伝える。 「おぉ坂上。元気そうだな。随分長かったな」 「はい、貴重な体験をさせてもらいました。色々有難うございました」 「店長。オレ新しいこと思いついたんです」 「何だ?」 「ツアー客に宿題出しませんか? 行った先のホテルで色んな質問に答えてもらったり感想を書いてもらうページを作っておいて、旅行の前に前もって渡しておくんです。  旅行先で最もリアルな情報を書いてもらえばそれ面白いですよね!」 「宿題か……。面白いな。大人に宿題なんて逆にに楽しみになるかもしれない。寝る前に宿題やらなきゃ、なんてな」 「タイトルは夏休みの宿題、冬休みの宿題とかね。日記のページもあるといいですよね。原案作ってみましょうか」 「そうだな。その宿題はそれぞれの行き先の情報としてホームページで伝えることも出来るなぁ」 店長は早速試作品に取り掛かるよう、坂上に命じた。 「藤崎先輩!」 「おぅ。おかえり。遅かったな」 「藤崎先輩の言った通り、ミステリーツアーに行く前と行った後では自分が全然違いますね!」 「だろぉ?」 「藤崎先輩はどんな体験をしたんですか?」 「俺はスペインに行ったよ。言葉はろくすっぽわからなかったけど何とかなるもんだな。タワーポイントって言えば現地の人は親切に場所を教えてくれたし、タワーポイントでは日本語使えるからホント何とかなったよ。サッカー観戦だって出来たんだぜ」 「へ、へぇ……」 「度胸がついたというか、開き直ったというか、前を向かなきゃ現状は打破できないんだとその時知ったよ。さすが店長だよねー。こんな体験させてくれるなんてさ」  その時撮った写真を数枚持ってきた藤崎は、懐かしそうに楽しそうに坂上に説明していた。 「で、お前は? どこ着いた? どんな体験した? 会社の経費だからっていいところ泊まって長居してたんだろう」  そう恨めしそうに話す藤崎を横目に、貴重とはいえあまりにも違いすぎるレアな恐怖体験など、とても話す気にはならなかった。  ましてや陸に降りないで終わったツアーなど、写真なんて……1枚もない。
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