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キキーーッ。ドン!
ウワンウワンウワン……。
スローモーションのように坂上は弧を描きながら宙を舞った。
「大丈夫ですかッ?」
「ヤバいんじゃない?」
「救急車呼ばないと!」
「意識は? 脈は?」
――耳元で誰かがなにか言っている。目は重くて開けられない。あぁ人生短かったなぁ。出血はあるのかな。骨は折れてんのかな。救急車に乗っても間に合うかどうか、全身ボロボロなんだろうなぁ。うん、間に合うかどうか。
……間に合う? あれ。俺今なにしてたっけ。ん? そうだよ、これから面接に行くんじゃん! あの寝てるオッサンのとこに行かなきゃよ。こんなことしている場合じゃないや、急げ急げ。
坂上は意識の中でやり残したことを思い出すとムクッと起き上がり、吹っ飛ばされた履歴書を拾い、何食わぬ顔をしてわっせわっせと面接場所へと走って行った。
生温い風の匂い。さっきまでの晴天がいつのまにか荒天に変わっていた。汚れた雑巾を絞るように灰色の空からボタボタと大粒の雨が降りはじめた。
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