きっかけ

3/5
17人が本棚に入れています
本棚に追加
/19ページ
「履歴書が濡れちまう!」  書類をシャツの中にしまいこみ店に着く。おじさんは腕を組みまだまだお休み中。坂上は自動扉を開けて中に入った。 「すみません。外の求人を見て来たのですが」 ハッと気がついたおじさんは客だと思ったのか〝いらっしゃいませ〟と言った。 「いや、あの、求人を見て来たんですけど」 「あ。あーそうですか」 まだ眠たげで思考が追いついていかない様子。 「えっと……じゃあそこに座ってください」  目の前の接客カウンターに座るよう指示され一度腰掛けた。とりあえず挨拶しておくかと坂上はまた席を立つ。 「坂上伊吹といいます。履歴書になります」 「あー、ちょっと待っててね」  そういって奥に行ってしまった。 ーー薮から棒に履歴書は早かったか。店長でも呼びに行ったんだろう。  
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!