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次の日から早速出勤となった坂上は、久々に紺のスーツに袖を通し8時半に会社に到着した。店長が開店15分前に挨拶の場を設ける。
「はじめまして。坂上伊吹です。旅行会社は初めてでわからないことばかりですが、どうぞ宜しくお願いします」
社員3人に迎えられ、ここに加わった。
「じゃあ藤崎くん、君に頼もうかな。坂上くんの準備」
「わかりました」
……オレの準備とは? 坂上はこれから始まる舞台へ一歩踏み出した。
「坂上くん、あっちのテーブルに行こうか」
藤崎はそういって4人掛けの客用テーブルに移った。
「君にはうちの会社を知ってもらうために新人研修の一環としてツアーに1つ参加してもらいます。それに参加して色々学んできて下さい」
「はい」
そういって藤崎は書類とパンフレットを持ち出してきた。
「参加するのはうち独自のミステリーツアー。
一番過酷で一番ステキなツアーと言われている。期間は早ければ1週間、最長で1ヶ月くらいかな。ミステリーだから詳細はシークレット」
「え? そんなに長く行って大丈夫なんですか?」
「学ぶにはいいとこだよ。めーいっぱい自然を堪能してくるといい。帰ってくる頃にはひとまわり人間が大きくなってるからそこは期待していいよ。向こうに行ってる間も給与は発生するから得した気分だよね」
ーーふぅーん、店がヒマだからってそんなことまでしてくれるなんてな。案外いいとこ入ったかも。と、浮かれ気分の坂上は藤崎に余裕の笑顔を見せた。
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