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「何だ? 大砲ぉーー?」
そこはだだっ広く緑が一面に広がっていて、その中に重々しくどっしりと構えた大砲がデンと据えてあった。その手前には直径2mくらいの不自然な丸い枠組みがあり、頭上には何らかの装置がある。それが何を意味するかわからずただ不安しかなかった。
ひとりの隊員が坂上を連れて枠組みに近づいていくと隊員は途中で足を止め、指をさして坂上に言った。
「では、あの丸い枠をまたいで荷物と一緒に中に入ってください」
言われるがままに枠組みをまたいで入り、隊員の顔を見た。知らないところに置いていかれた小さな子供のようにあどけない表情を残す坂上は、このだだっ広い敷地の中にポツンと一人。
「はい、そのまま動かないでくださいね」
隊員が俄かに微笑みスイッチを押す。
3秒後。
ドバッーーっと頭上から粘っこいジェルのような透明なものを被る。
「ヴッ……!」
頭上から空気より重たいものが降ってきて坂上は思わず目をつむった。透明なものに包まれたような不思議な感覚に陥ると、荷物を強く握りしめその場にうずくまった。
「何が起きた? い、息が……。でき……」
「る」
するとフワリと足元が軽くなり宙に浮いた。
「え? 何なん?」
フワンフワンと体が持ち上がり目を開けると、自らの体がクルクルと回転し始めた。自分を包んでいた透明なジェルは回転とともに徐々に体から離れていき、遠心力で丸いカプセルの形が出来上がっていく。そして更にクルクルと回転しながらキレイな丸い形に整えられていった。
これで坂上は完全にカプセルに閉じ込められ、出発の準備は整った。
「これホントに新人研修? 最近の新人研修って進歩してるんだなぁ」
これがミステリーツアーの始まりだった。
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