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いってらっしゃい!
回転が止まると複数の隊員はカプセルに集まってきた。坂上はカプセルの中から見下ろしその様子を見守っている。
隊員たちはリーダーの合図に従いカプセルを持ち上げ、大砲の先端にスポッとセットした。
「全員退避ーーッ!」
リーダーが大きな声で全員に通達する。隊員たちは腕を腰にあて手のひらを軽く握り、ザッザッザッと安全な場所へ退避する。坂上は透明なカプセルの中で、自分から離れていく隊員たちを無表情な面持ちでじっと眺めていた。
「安全な場所に退避完了!」
隊員はひとつひとつの行動がハッキリしてわかりやすい。とはいえ、安全な場所……?
「自衛隊が退避って……」
これは危険なんじゃないかと不安になる間もなくその時は来た。
どこかでカウントダウンが始まった。
3、2、1……GO!
ズドンという重低音が辺りを揺らす。
地響きとともに飛ばされた坂上inカプセル。
グングン飛ばされていくカプセルは一瞬にして地上から離れ、景色も見えずキツイGがかかる。そしてそのまま雲の中に突入していった。
ーー何だ、なんだ?
真っ白な雲に入っていったはずなのに突如空が暗転する。どこからか不気味な重低音が響き始める。
異世界からポッと入った侵入者を威嚇するかのように、空が唸り雷鳴が強く閃いた。
「ウダァァーッ!」
カプセルのスピードは空の状況すら一瞬で変わるほど猛スピードで雲をくぐっていく。
初対面の雷に目の前で挨拶を交わされたようなその独特な自己紹介は、まるで目の前で空が真っ二つに割れたかと思う過激な音がからだ中にしびれた。
どうやらカプセルは完全な防音ではないらしい。
「怖ぇー、怖ぇーッ!」
積乱雲の異常なまでの恐ろしさーー。
雲の中でバチバチと大きな火花が散り、恍惚な光が辺り一面真っ白に、まさに最大級の明るさ。
カプセルがゆらゆらと、先程までのスピードから幾分落ちた気がする。するとドーンとすぐ近くで建物でも大爆破したような轟音が聞こえると、カプセルは急に飛行高度を落とした。
カプセルは強風に煽られ、海に墜落し海底まで勢いよく潜っていく。
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