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三月三日
雛祭りの朝。
女の子がお雛さまの前でお母さんに、
「お雛さま、泣いてたよ」
そう言うととお母さんは、
「何言ってるの?笑ってるじゃない」
不思議そうに答えます。でも、幼い女の子は納得しません。
「違うよ、喧嘩して、いなくなって戻って来たの」
「そうなの。それは知らなかったわ」
お母さんは女の子が幼い子にありがちな想像力でお話を作っているのだと思って適当に聞き流していました。
「お座りしておすましするのがいやになってみんなで冒険して、今日やっとみんな戻って来たの、だからほっとして泣いてたの」
お母さんは、子どもって面白いこと考えるものねと微笑ましく思い、
「そっか、仲直りしたのかな?」
女の子に聞くと、
「うん、仲直りしたよ」
やっとお母さんが話をわかってくれたと嬉しそうにうなずきます。
段飾りには戻ってきた人形たちが勢揃いしています。三月三日、今日は楽しい雛祭り。
(完)
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